「人の能力や知能は生まれつき決まっていて、変わらない」と信じ込んでいませんか? その人にとって、失敗は単なるミスではなく「自分の無能さの証明」を意味します。能力が固定されていると信じているため「失敗した=自分には能力がない=もう挽回(ばんかい)できない」という絶望的な結論に直結してしまうのです。
一方で、仕事ができる人は「グロース・マインドセット(増大理論)」、すなわち「能力は努力次第で伸ばせる」と信じています。そのため、失敗を「学習の機会」と捉えます。ネガティブなフィードバックを受けても「なるほど、次はこうすればいいのか」と成長の糧にできるのです。
厄介なことに、このような思考グセは組織内で伝染することがあります。遂行回避目標志向の人ばかりが集まって、組織が失敗するということも起こりえます。これはクロスオーバー効果と呼ばれ、目標志向性も伝染し合うことが研究でも示唆されています(※Bolger, N., DeLongis, A., Kessler, RC, & Wethington, E. (1989).. Journal of Marriage and the Family, 51 (1), 175–183. https://doi.org/10.2307/352378)。
思考グセも
「後天的に」直せる
このような思考グセを持ってしまっても、一生変わることができないわけではありません。マインドセットは後天的に書き換えることが可能です。
そのための方法は大きく分けて3つあります。
1つ目はフィードバックです。もしあなたが部下を指導する立場なら、単に「ここがダメだ」と評価を下すような伝え方は避けるべきです。評価に過敏になっている彼らにとって、それは攻撃としか映りません。代わりに「今回の経験からどのような知識が得られたか」「次はどうすれば解決できるか」という、客観的な事実と未来の行動に焦点を当てて対話をします。
2つ目の方法は、非常にシンプルですが強力です。それは、「知能や能力は、筋肉のように使えば使うほど発達する」という事実を知ることです。「能力は努力次第で向上する」という知識を教育されるだけで、人の学習意欲は高まり、成績が上がるという研究結果もあります(https://news.stanford.edu/stories/2019/08/changing-students-mindsets-learning-improves-grades)。
最後に、組織の仕組みで変える方法です。人は「何をすればいいか分からない(役割曖昧性)」という状態に置かれると、不安が高まり、防衛的になります。つまり、役割が曖昧だと「遂行回避目標志向」になりやすいのです。
逆に、「あなたに求めている役割はこれです」と明確に示されると、努力の方向性が定まり、不安が取り除かれます。「これを頑張ればいいんだ」と分かることで、前向きな「遂行接近目標志向」に変わりやすくなります。
「仕事ができない」と思われている人の多くは、能力が欠如しているというよりも、思考が悪いパターンに陥っているだけです。「失敗したくない」「評価が怖い」という心理が働きすぎているために、本来持っている力を発揮できていません。
そして、能力は決して固定されておらず、経験によって拡張していくものです。失敗は、あなたの価値を下げるものではなく、単なるデータの蓄積に過ぎません。このように、「思考グセ」をほんの少し変えるだけで、仕事の風景は劇的に変わるはずです。








