関西におけるアルムナイの現在地とこれから

 関西の企業と向き合ってきたこの半年強で、「本当に関西でアルムナイを普及できるか?」という疑問は、「アルムナイ・リレーションシップの可能性は東京に劣らないどころか、むしろ大きいかもしれない」という希望に変わってきています。理由のひとつは、メンバーシップ型雇用です。本連載第9回でも書きましたが、メンバーシップ型雇用の文化が色濃く残る企業ほど、アルムナイとの関係構築から得られる恩恵は大きいことを実感しています。関西の企業やアルムナイと接する中で、家族的な文化が非常に大切にされていることを感じています。在籍時の関係が強固でメンバーシップ型が前提であればあるほど、退職という行為が「裏切り」と捉えられてしまい、退職時の体験が悪くなってしまう傾向があります。それもあってか、関西の企業とお話をしていると、アルムナイ・コミュニティを構築するサービスである「オフィシャル・アルムナイ」の導入前に、本連載第10回でご紹介した、退職者の本音を知る「退職者インタビュー」や、本連載第2回で触れている、退職時の体験を良くするための「オフボーディング研修」など、退職を前向きに変えること、まさに当社が掲げる「辞め方改革」から着手することに興味を持たれる企業が多いことが印象的です。

「関西は終身雇用の意識が強いから、アルムナイなんて無理だ」という声もあります。しかし、私はそれを逆に捉えています。終身雇用文化が強いということは、同じ企業で長く働いた人が多く、「企業特殊的能力」という、その会社でしか通用しない共通言語や暗黙知を深く持つ人材が多いということです。その方々がアルムナイとして外に出たあとも、そのつながりを活かせる環境を整えることの価値は、計り知れないのです。

 一方で、皆さんも同じイメージを持たれているかもしれませんが、短期的な投資対効果に非常に敏感なのも関西企業の特徴です。そのため、これは関西以外の企業においても当然のことではありますが、具体的な成果の事例とプロセスを、他社事例を踏まえて提示する必要性は、他の地域の企業と比べても高いと感じています。ここまで8年間以上、アルムナイの事業を展開して広げてきた当社だからこそ、積み上げてきた多くの事例とプロセスがあり、早すぎず遅すぎずの、このタイミングでの進出はやはり間違っていなかったと強く実感しています。

 加えて、当社グループ企業で採用支援サービスを提供するレインと採用の側面から共同提案をする機会が増えている中で、人材不足は首都圏だけの問題ではないことも、あらためて感じています。関西の企業も、いずれ、「いままでの採用手法だけに頼らない人材ポートフォリオ戦略」へと舵を切らざるを得ない局面を迎えることは間違いなく、そのときに備えて「退職で終わらない、企業とアルムナイとの新しい関係づくり」を、いまからご一緒できていると感じています。

「関西はまだ数年先」という言葉を、もう繰り返すつもりはありません。半年間で出会った関西の企業とアルムナイの方々の熱量は、そう感じさせないものだったからです。関西らしい「辞め方改革」と「アルムナイ・リレーションシップ」のあり方を、関西の皆さんと共に考えていきたいと思っています。関西でのアルムナイの広がりは、思っていたより、ずっと早いかもしれません。