高級時計の「スーパーコピー」を
作っているのは誰?
先述のFHや欧州連合(EU)、国際刑事警察機構(ICPO/INTERPOL)の報告書は、多国籍の組織犯罪グループ(いわゆるマフィアなど)の関与を指摘している。偽物時計の製造拠点は、中国や東南アジアを中心に、世界中に存在するという。
マフィアが偽物時計の製造・販売に関与する理由は、大きく三つある。
一つ目は、従来のメインビジネスだった「麻薬や武器の密売」と比べると、発覚するリスクが圧倒的に低いことだ。詳しくは後述するが、部品の製造拠点が世界各国に分散しているので足が付きにくい。また、ビジネスの相手は犯罪組織ではなく一般消費者だ。仮に摘発されたとしても、“本業”と比べると罰則は軽度である。
二つ目は、利益率が非常に高いことだ。そもそも「本物の高級時計」の原価率は20~30%程度とされる。だからこそ、偽物の部品を使って原価を抑え、大量に製造・販売できれば莫大な利益が得られる。
三つ目は、マネーロンダリング(資金洗浄)の有効な手段になることだ。違法なオンライン賭博などで儲けた金を元手に精巧な偽物時計を作り、ダミー企業を隠れ蓑に販売すれば、資金の流れを複雑化できる。
時計が偽物であることが大々的に露呈しない限り、販売で得た収益は「キレイなお金(正当なビジネスで得た利益)」であるかのように装うことも可能だ。
OECDがまとめた「世界の偽造品カテゴリートップ10」拡大画像表示
つまり彼らにとって、偽物時計の製造・販売は「ローリスク・ハイリターンの美味しいビジネス」なのである。
では、なぜマフィアは本物そっくりのスーパーコピーが作れるのか。その秘密は、警察や税関の目をかいくぐる「国をまたいだ高度な分業体制」にある。
というのも、彼らは完成品を組み上げてから密輸するのではなく、時計の部品(ラベル、ケース、ムーブメントなど)を複数の国や工場で製造している。
分散した拠点で造った部品を、密輸したい国や、その国に近い“闇工場”に運び、その場で組み立てるのだ。こうすることで、官憲による摘発のリスクを最小限に抑えている。
また、一部のスイス製ブランドにおいては、本物の高級時計の部品工場から、正規品の部品を横流しさせて調達する手口が使われる。







