――古木の存在がお店の居心地の良さにつながっているのですね。

山上 自然素材である木は有機的な形状や色を有しているので、それだけでも心地よいと感じるものですが、古木はさらに奥深く、それぞれ表情が違っていて見応えがあるのです。樹種によっても明らかに違いますし、囲炉裏のある空間で使われていたものは、表面が燻(いぶ)されて黒光りしている。釿(ちょうな)による加工跡が残っている木も多く、はるか昔の職人による手仕事が実感できます。

 そういったディテールが、新たに建築された空間にさえ時を経た深みを与え、木の持つ歴史が私たちに語りかけてくれるから、温もりを感じ、快適さにつながっているのだと思います。実際、多くのお客さまに「落ち着く」「居心地がいい」と言っていただいているんですよ。

R Bakerベーカリーカフェ R Baker うめきたグリーンプレイス店の施工例。古木の柱を随所に配置、エントランスから続く床の枕木や木製テーブルと一体で自然の風景を演出する 写真:浦部裕紀

古木は「時間資本」――刻まれた何世代もの物語こそ真価

――なぜ「古木」に注目したのでしょうか。

山上 古木に関する取り組みとしては、1985年にアパレルブランド「オクトパスアーミー」の店舗を施工するため、海外から古材を仕入れたことが出発点でした。

 ただ、私たちが調達コストをかけて高価な古材を輸入する一方で、日本国内では古民家が次々と解体され、古材が捨てられている。その現実を目の当たりにして、自分に何かできることはないかと考えたのです。そこから、古民家から古材を買い取り、保有・販売する事業をスタートしました。

 先に述べたように、「古木」という言葉は私たちの造語です。後ほどお話ししますが、当社は知的財産を生かす経営を推進しており、その観点からも、業界で「古材」といわれている素材とは一線を画したいという思いがありました。

 古材には「廃材」のイメージもあって、建築資材として再利用しづらいし、ましてや高級素材という認知は得られにくい。

 それで、まったく異なる視点から、素材の持つ価値を捉え直すことが必要だと思い立ちました。古木の最大の資産価値は「その内側に時間が蓄積されている」ことです。つまり、何世代もの長い時間を経て刻まれた、さまざまな物語(ストーリー)を内包する「時間資本」であり、だからこそ高い評価を受けるのです。