全国の県レベルで、青少年を対象にした携帯電話の利用規制を強化する動きが相次ぎ始めた。第1号として、兵庫県が7月からフィルタリングの解除要件を厳格化する改正「青少年愛護条例」を施行するのに続き、石川県でも同県と同県議会がそれぞれ、月内をめどに「いしかわ子ども総合条例」の改正を目指す構えを見せている。

 いずれの動きも、政、官、財界入り乱れた議論の末に、ようやく4月からの施行に漕ぎ着けたばかりの国の「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」よりも厳しい規制を課そうとしているのが特色だ。それだけに、再び、全国レベルの論議を呼ぶ可能性がありそうだ。

フィルタリングの義務化は
規制派と反対派の妥協の産物

 4月に施行された「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」の立法趣旨は、18歳未満の青少年が犯罪やいじめに巻き込まれることなく、安心かつ安全に、携帯電話やインターネットを利用できるようにすること。このため、その具体策として、同法の第17条は、携帯電話会社に対し、携帯電話(PHSを含む)サービスを未成年に提供(あるいは契約)する場合、保護者の申し出がない限り、悪質サイトなどへの接続を防ぐことができるフィルタリング(「ろ過する」の意)機能の使用を条件とすることを義務付けている。

 また、同条第2項では、保護者に対して、青少年に使わせる携帯電話を、保護者が代行して契約する場合、その旨を携帯電話会社に申告することも義務付けている。

 同法が成立したのは、昨年6月のこと。そもそも、出会い系サイト関連の犯罪防止や青少年の万全の保護を主張し、広範な規制を求めた、自民党議員、警察庁、内閣府、経済産業省などと、ネット上の「知る権利」「言論の自由」などの擁護のため規制の導入に強い反対を示した総務省、インターネット関連企業、新聞協会の妥協の産物として、携帯電話会社などにフィルタリング機能の提供が義務付けられた経緯がある。(当時の議論は、本コラム2008年04月25日付けの「政府のネット規制法案にヤフーなど産業界が反対表明」などの参照を。)

 青少年の携帯電話利用に関連して、同法の制定が決まるまで、各地の都道府県や市町村レベルで独自にアピールなどを採択して、警鐘を発するところが多かったのは事実。というのは、携帯を持たない子へのいじめや、携帯サイトを使った誹謗中傷、あるいは出会い系サイトなどで犯罪に巻き込まれるケースが各地で発生していたからだ。

 その一端を紹介すると、東京都教育庁が昨年10月、注意喚起のためのアピールを発出したほか、横浜市教育委員会も同月、「『ケータイ・ネット』から子どもたちを守るための提言」を発表。大阪府教育委員会も昨年12月、小・中学校への携帯電話の持ち込みを原則禁止する通知を出していた。これらの中には、東京都のように児童・生徒、保護者、学校の先生に対して、必要のない限り子供に携帯電話を持たせないことを具体的な行動指針としていたところもある。が、あくまでも、体裁はアピールにとどまっており、条例などの改正には至っていなかった。