「かかりつけ病院や他の病院の電子カルテ、マイナポータルに紐づけられた処方箋情報や特定健診情報、スマートウォッチなどさまざまなウェアラブル端末に記録されたヘルスケアデータ(個人の日常生活からなるライフログや、血圧、心拍数、体重などのバイタルデータ)といった、患者さんがより良い治療を受け、健康であり続けるために有益な個人の健康情報は多々あります。これらはPHR(Personal Health Record)と呼ばれています」

 と、高尾氏は語る(以下同)。

「ただ、日本のPHRは、実質的にはスマートウォッチに代表されるウェアラブルの情報だけです。アップルウォッチ外来における心電図のような一部を除くと、医療に活かす仕組みがないのです。欧米では、PHRは病院のデータにつながることが当たり前になっています。たとえばアップルウォッチのヘルスケアアプリは、米国ではすべての病院と連携することができます」

 日本政府は国策として、PHRの連携を医療DXの中心的な要素と位置づけ、「全国医療情報プラットフォーム」の構築を目指しているが、現状はなかなか進んでいない。基本的に、電子カルテなどの主要なPHRはインターネットにはつながず、外部とは連携しないことが、日本のスタンダードになっている。

 2022年10月31日に発生した、大阪急性期・総合医療センターに対するランサムウェア攻撃による大規模なシステム障害が、こうした状況に拍車をかけた。

 それまでも、医療機関の情報システム(特に診療系)はインターネットと分離されたクローズドな環境で構築されていた。「院内に閉じておく方が高いセキュリティレベルを保てる上に、外部との接続の必要性も薄いから……」というのが理由だった。ところが、この“クローズド環境だから安全”といった油断が仇となる。セキュリティホールの見逃しに繋がり、医療機関は昨今、ランサムウェア攻撃の格好の標的になっている。

PMHRは医師の紹介状を
いつも持ち歩くようなもの

 直接インターネット環境に接続していなくても、システムベンダーの保守回線や、他の企業との連携用の回線など、外部との接続は複数に渡って存在しているのだから、“連携しなければ安全”と思うのは早計だ

 高尾氏は新しい概念としてPMHR(Personal Medical Health Record)を提唱することにした。慈恵医大の各診療科に「PMHRの連携が実現したらどう使いたいか」のアンケート調査を実施したのだ。(以下参照)