こんな場面でこそ「チューン・イン」(編集部注:自分の心身の状態に意識を向け、最適な状態に調整すること)をすれば、周囲の人に対して、もっと良い振る舞いができる。
いったん停止し、深呼吸を数回繰り返し、好奇心を持つ、ただそれだけで自分の脳の化学反応に影響を与えられるのだ。
この手法を使えば、緊迫した場面でも、自分の反応を選択できる。ロサンゼルス市警察の麻薬捜査課の特別班が、ガサ入れに備えて特別訓練を受けているのも、それが目的だ。
切った張ったの現場を
冷静にこなすためのルーティン
部隊はまさに、現場に踏み込もうとしていた。
現場に到着。アドレナリンが噴き出す。号令を待つ。隊長が手信号で合図を送る。その合図で動く者はいない。全員がゆっくりと深呼吸を開始する。そして、深い感謝やありがたさを感じたときのことを回想する。
そのときの情景、会話を思い描き、感情をはっきりと思い浮かべる。
この短いルーティンの後、隊長が頷くと、それを合図に部隊は現場に突入した。ドアを壊して中に入り、一発も発砲せずに、現場にいた全員を取り押さえた。
任務成功だ。
状況やその捉え方は変わらなくても、突入前のルーティン(プリフレームという心理学の技法)によって、脳には違う化学反応が起きていた。
脳内の変化により、緊迫した状況でもより適切に対応できるようになっていたのだ。
警察が実践しているのは、ハートマス研究所直伝のテクニックであり、これには同研究所の神経科学研究の裏づけがある。
ポジティブなイメージを思い浮かべ、過去のポジティブな体験を思い出せば、自律神経系が整い、コヒーレンス(調和)状態に変えられることをハートマス研究所は発見した。
感謝と愛で満たされると
脳のパフォーマンスは爆上がり
コヒーレンス状態になると、脳では神経伝達物質がバランス良く働き、論理的思考やクリティカル・シンキングを担う前頭前皮質の機能が高まる。
この訓練を受ける以前は、薬物捜査の踏み込み待機中の捜査官は、混乱や暴力のイメージでアドレナリンが分泌し、脳はコヒーレンス状態とは真逆の過敏状態になっていた。







