取引開始時点で、業務内容や仕様、対応範囲(できること/できないこと)や補償の範囲を契約書や仕様書で明確にしておくことで、不合理な要求が生じにくい環境を整えることができます。
また、取引先や取引内容によっては、中小受託取引適正化法(通称:取適法、旧:下請法)やフリーランス新法といった法規制が適用される場合もあり、不当な要求は法令違反となる可能性があります。BtoBの取引であっても契約自由の原則には限界があり、法的な規律の下で適切に対応することが重要です。
「取引先を変えてやる!」
重要取引先から脅されたらどうする?
「取引先を変えてやる!」という言葉は、BtoBにおけるカスハラの典型的な常套(じょうとう)句です。立場が弱いサプライヤー側にとっては、取引関係への影響を懸念し、問題を先送りにしてしまうケースも少なくありません。そこで、カスハラ対策に詳しい細井大輔弁護士に、具体的な対策方法を聞きました。
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細井弁護士:2026年10月からはカスハラ対策が法律(改正労働施策総合推進法)により義務化され、企業には従業員を守るための体制整備が求められます。さらに、企業間取引においても、相手方企業の従業員によるハラスメントについて、当該企業に対して事実関係の確認や是正を求めることが制度上想定されています。
厚生労働省の指針でも、他社からの協力要請に応じることが求められているほか、こうした申し入れを受けたことを理由として契約の打ち切りや取引縮小といった不利益な取り扱いを行うことは望ましくないとされています。正当な問題提起を行った側が不利益を受けるべきではないという点が重要です。
――こうした事例は、社員個人での対処は難しそうですね。
細井弁護士:重要なのは、このような発言に対して個人で抱え込まず、組織として対応することです。
「取引を切る」という言葉を背景にした要求であっても、契約内容を逸脱した過度な要求や威圧的な言動は、正当な業務上の指示ではなく、カスタマーハラスメントになり得ます。
やりとりの記録を残したうえで対応方針を社内で統一し、必要に応じて上位者やコンプライアンス部門、さらには顧問弁護士を通じて相手方企業に正式に申し入れることが有効です。
また、不合理な要求に対しては、単に断るだけでなく、契約書や仕様書、法令などを根拠として「対応できない理由」を具体的に示すことが重要です。
関係維持を優先するあまり不合理な要求を受け入れ続けないこと、適切な線引きを行うことが、結果として長期的な取引関係の健全化にもつながります。







