既存の改札機にアンテナを後付けした「ウォークスルー改札」は、私たちがイメージしていたそれとは、ずいぶん違うもののように思える。高齢者や身体障害者など交通弱者、ベビーカーや大きな荷物を持った利用者など、手がふさがった人の利便性が向上するのは確かだが、自動改札機の形状は何ら変わらないし、ひとつの付加サービスでしかない。

 だが、これは現実的な戦略である。ウォークスルー改札が「Suica Renaissance」の文脈で出てきた通り、JR東日本はこれを次世代Suicaの中核技術と位置付けている。

 JR東日本マーケティング本部Suica・決済システム部門システムユニットの今井健太氏は「ウォークスルー改札はSuicaのアップデートと考えているので、残高情報などはSuicaと同じようにFeliCaに持たせたい」として、UWB通信のデータを携帯のFelicaチップに記録することで、今のSuicaと互換性を持たせる方向で検討していると述べた。

 つまり、ウォークスルー改札で駅に入場し、通常の改札でタッチして出場するなど、現在のSuicaエリアでそのまま使用できるというわけ。今井氏は「ひとつの改札機で(磁気券、ICカード、QR乗車券など)全ての決済手段を利用できるように、ウォークスルー機能もアドオンして、全てをスムーズに使ってもらう」とも述べている。

 券売機できっぷを買うことなく改札を通過できるようになったSuicaと比べると、ウォークスルー改札へのアップデートは地味に映るかもしれない。だが、この機能は2028年度に登場予定の「Suicaアプリ(仮称)」の目玉機能のひとつとなり、運賃の後払いや利用状況に応じた割引の適用など、次世代Suicaの新サービスの入り口になると考えられる。駅の改札口がなくなるような抜本的な変化は、さらに10年、20年をかけて進むのだろう。

UWB方式普及への
2つの課題

 もちろん課題も多い。ひとつはICカードを購入すれば誰でも利用できたSuicaと異なり、UWBは対応した端末が必要である点だ。ミリ波方式なら、比較的安価な専用端末を購入(または無償貸与)すれば、全てのSuica利用者が可能だったが、他に用途のない専用端末を使ってまで導入するサービスとしては、発展性、拡張性に乏しいという判断があったと思われる。

 現状では、UWB通信機能を搭載しているのは、iPhone、Androidともにハイエンドモデルに限られており、安価な製品に普及するまでには相応の時間がかかるだろう(タッチ決済は2004年の「おサイフケータイ」登場から本格普及まで10~15年かかった。それでもモバイルSuica利用率は3割程度とみられる)。その意味でSuicaとの互換性は必須と言える。