インドネシア高速鉄道が抱える
「ラストマイル問題」とは
これに対しWhooshが抱える最大の構造的欠陥は「ラストマイル問題」である。建設費高騰を抑えるため、路線はバンドン市街地まで乗り入れず、郊外のパダララン駅で乗客を在来線フィーダー列車に押し出す形になっている。
スーツケースを抱えた乗客が狭い改札に殺到し、最新鋭の高速車両から座席不足のディーゼル動車へ乗り換える光景は、350km/hの速度優位性を自ら帳消しにしている。現地では、クルマの方が速いと不満も出ている。
バンドン市街まで、線路を伸ばせば不便は解決するのだろうが、さらなる借金が必要となってしまう危険な賭けだ。インドネシア政府は頭が痛いだろう。
インフラ整備後まで
見据えているか
スリランカが債務を返済できずハンバントタ港の運営権を99年間中国企業に事実上引き渡した事例ほどの極端な「債務の罠(わな)」を、現時点のWhooshにそのまま当てはめるのは性急であり、現在は両国でリスク分担型の再編が模索されている段階だ。
とはいえ、運営や都市接続の詰めが甘く、インフラ整備後の利用者の利便性まで織り込まれていたとは言い難い。
2019年のG20大阪サミットで日本が主導した「質の高いインフラ投資原則」が技術移転と現地人材育成を明確に掲げる意味は、ここにある。立派な車両が走り立派な駅舎が建っても、運営能力と都市との接続が現地に残らなければインフラは持続しない。
台湾とインドネシア、二つの線路が示しているのは、「車両や設備を導入する」ことと、「運営・保守・都市接続まで含めて現地に持続可能な仕組みを根付かせる」ことの差である。
一帯一路を推し進める習近平国家主席の下で、中国の「政府保証不要」「財政負担不要」という甘い言葉に乗ったインドネシアの現在進行形の苦闘と、痛みを伴う国家介入を経て自立を確かなものとした台湾高速鉄道――この比較から我々が学ぶべきものは、決して少なくない。







