紙の辞書で調べると
前頭前野は大いに活動する

 一方で紙の辞書を使って単語を調べる時には、前頭前野は大いに活動した。

「何もしない状態の後に紙の辞書で調べ始めると、前頭前野の活動が急激に上がっていることがわかるのです」と川島教授が補足する。

「ですから、紙で調べるアナログな手法を使って探す時には、完璧ではないものの調べたことが記憶に残りやすい。次に同じことが出てきた時にイチから調べ直さなくても理解できるのです」

倍速視聴では
記憶に残らない可能性大

「スマホで検索」と同様に、「動画視聴」時も、脳活動に抑制がかかる。

「動画を見て一時的に内容を理解をした。それならそれでいいのですが、また同じことを知りたくなった時に記憶に残っていないため、再び動画を見なければならないでしょう。時短で行っているつもりが、どんどん無駄な時間を費やしていないでしょうか。まして“倍速視聴”ではもっと記憶に残らない可能性が高い」

 動画の倍速視聴は、「倍速にしないと集中できないほど注意力が散漫になっているサインとも考えられる」と指摘する。

「ネット上では注意が次々別のものに向かいやすい。動画の視聴中に“通知”が入って、そちらに気持ちがもっていかれることもあるでしょう。このような行為を心理学の世界ではスイッチングと呼び、繰り返し行っていると、集中力がどんどん短くなることが明らかになっています。スイッチングが常態化してしまうのです」

 新奇性のある刺激を我慢できずにスイッチングを続けることは、「目の前の小さな報酬を追いかけ続ける、ドーパミンに支配された行動」(川島教授)ともいえる。ハマりやすくなり(依存性が高まり)、その上前頭葉が鍛えられず、脳機能が低下していく。

 とりわけ日本人は体質的にスマホに依存しやすい可能性があるようで、現在同研究所では遺伝子レベルでの研究解析を進めているそうだ。

スマホへの依存傾向が高いと
脳に加齢性の変化

 私はこれまでの取材で、多くの脳科学者が「脳は鍛えれば鍛えるほど機能が向上する」と話すのを聞いてきた。そして「スマホを使うことは脳を使っていること」だと思い込んでいたのだが、実態は逆だった。