現代人の多くがスマホにどっぷりと浸かることで、脳が働かなくなる、つまり前頭前野を使わない生活に陥っているということだ。確かに取材先に向かう時の電車時刻をすぐに検索、スマホの地図機能を頼りに目的地に向かう、合間にはニュース検索、メールやLINEをチェックと、スマホに頼りっぱなしだ。

 こうした生活を続けると、どうなるのか。

「子どもの頃にスマホ(インターネット)を毎日使用する習慣があると、3年間で大脳灰白質の発達が抑制される。これは前回、述べました。また大人になってスマホを使うようになった人、例えば私たちが大学生を対象に調査した場合、依存傾向が高ければ、脳の大脳灰白質に加齢性の変化が出ることがわかっています」

 脳の大脳灰白質に加齢性の変化――すなわち早く年を取ってしまう、認知症の発症や、進行を早めてしまう可能性があるというから恐ろしい。

デジタル機器を手放せないなら
脳を鍛える2つの方法

「私たちは自分の脳を使わなくてもいろんな情報処理ができる便利な社会を作ってしまいました。それによって脳が衰えるなら、デジタル機器のような便利な道具を使わない生活に戻るというのも一つ。それも真摯にいいと思います。でも現実には難しい方が多いと思うので、この便利な社会で脳を鍛える方法は二つあります」

 一つは、いわゆる「脳トレ」だ。

「私たちも作っていますが、計算問題を速く解く。文章を速く読む。それによって脳の情報処理速度が上がり、情報を処理するための記憶の容量(ワーキングメモリー)も大きくなることがエビデンスとして得られています」

 例えるなら、体に負荷をかけるトレーニングをすれば筋肉はより大きくなる。人の脳にとっても、デジタル機器によって平坦になってしまった道のりで、脳トレのようなハードルを設けることで脳をよりパワーアップさせるということだろう。

 そして脳を鍛える方法二つ目は、いわゆる「リア充」。誰かと会話をする、食事をする、旅行や演劇、ライブをリアルで楽しむ。リアルな体験をしている間はスマホから離れられ、前頭前野がよく働いてくれるのだ。