前回に続いて、2013年2月にスペイン・バルセロナで開催された、世界最大級のケータイ産業の展示会「モバイル・ワールド・コングレス(以下MWC)」のレポートをお届けする。
……と、本題に入る前に、本連載の執筆が5ヵ月近く中断しまったことを、まず読者の皆様にお詫びしたい。言い訳を申し上げると、本業が猛烈に多忙を極めてしまい、執筆の時間を確保できなかったという次第である。
ただ、通信・放送セクターのコンサルティングや、個人情報・プライバシーまわりを中心とした制度設計等をお手伝いしている人間が、ことほど左様に繁忙となったという事実から、何かを読み取ってくださる方もいるのではないだろうか。
実際、移動体・固定を問わず、国内通信業界の大変革が2-3年後に訪れることは概ね確定し、すでにその準備や布石を打つことが、目先の課題となっている。また個人情報・プライバシーについても、本年12月を目途にした政府としての方針を策定するという工程が、政府のIT戦略をはじめとして明らかにされており、それに向けた動きも加速している。
こうした中で、前編を執筆してしまった手前、MWCのレポートを続けるのが妥当なのかは、正直逡巡もあった。しかし改めて構成してみると、MWCで見えた風景が、現時点の国内モバイル産業の混沌を、如実に表していたことに気づいた。
この5ヵ月で、すでに日本のみならず世界のケータイ業界では、大きな動きが見られている。MWCにおいて、その胎動のようなものを感じられる場面もあった。そして、ガラパゴスを脱した日本勢は、国内状況や世界市場に向けてどのように向き合っていくのか、決断を求められるフェーズに入っている。先行する報道なども出ているが、改めてバルセロナにおける日本勢の動きを振り返るところから、連載を再開したい。
MWCにいた日本企業、いなかった日本企業
MWCに大きく出展していた日本の端末メーカーは、ソニー、NECカシオ、富士通、京セラの4社となっていた。それぞれ、国内では主要キャリアの夏冬の商戦に遭わせて新製品を発表してきているが、MWCにおいてはそれぞれ異なるプレゼンスを見せていた。