彼は自分にとって大切な価値を定義し、その価値を基準に今回のチャンスを分析した。彼にとっては、お金は大切な価値に入らない。もし入っていたら、即座にオファーを受けただろう。彼が大切なのは、家族との時間と、本当に興味がある仕事をやることだ。
自分の価値観がはっきりしていたおかげで、テリーは意志を貫くことができた。彼は言う。
「その会社からは1年くらいずっとオファーが絶えなかった。何度も断るのは勇気がいったよ。特に売上が少ない時期は大きな誘惑だった。でも今は、断ることができてよかったと思っている」
メアリー・ヴァンデウィールも同じような経験をした。彼女はオーストラリアのシドニーに拠点を置くブランディングとデザインの会社を経営していたのだが、ある国際的な大手広告代理店が、彼女の会社を買いたいと申し出たのだ。
彼女にとって一番大切な価値は何か?
それは「独立」だった。
「その大手広告代理店にすでに買収された2つの広告会社に話を聞いたの。話から判断すると、買収されたら私が望むような自由は手に入らなさそうだった。そのうえ当時はニューヨークに支店を出すことを考えていたんだけど、買収されていたら支店計画も許可されないと思った。だから断った。結局2000年にニューヨーク支店は実現したの」
買収の話から20年以上がたった今、メアリーは自分の判断が正しかったと確信している。
そして最終的に、完全に自分の判断でそのビジネスを別の会社に売却した。
誰もがうらやむ出世話を
素直に喜べなかった理由
ときに、現在の状況ではなく、理想の未来を基準に決断することもある。トム・ウォーターハウスの話を聞いてみよう。
2007年秋、資産管理会社の管理職だったトムは、会社から昇進のオファーを受けた。シンガポール法人の最高執行責任者(COO)になるという夢のような話だ。彼は言う。
「当時、社内では誰もがこの役職を狙っていた。シンガポールでは大きなプロジェクトがいくつもあり、予算も潤沢だ。私自身、シンガポールは大好きな場所で、現地のプロジェクトに何度か参加したこともある。一緒に仕事をした人たちもいい人ばかりだった」







