人生は何が起こるかわからない。今の決断が、どういう結果につながるかを予測できない。だが、自分にとって本当に大切なことなら、それでも可能性に賭けなければならない。
トムが昇進を断った2年後、「もう夢が叶うことはないだろうとあきらめかけた」ちょうどそのとき、ある女性と出会った。トムは彼女と結婚し、2人の子どもに恵まれた。
「自分にできないこと」を
はっきり決める
最初にはっきりさせておこう。自分にできないことがあるなんて、誰も認めたくはない。
もちろん、人生で一度も触れたことがない分野もあるだろう。「電気工学なんて習ったことがないからまったくわからない」人も多い。あるいは、「できない」ことが自分のアイデンティティの一部になっている分野もある。「私は運動音痴だから」というように。
しかし、自分の分野で大切とされる能力に関しては、「できない」とは認めたくないものだ。「人並み」でも満足できない。誰もが「自分は平均より上だ」と信じている。
フランセス・フレイとアン・モリスが、著書の『ハーバード・ビジネススクールが教える顧客サービス戦略』(日経BP)の中で取り上げたのも、まさにその現象だった。私が2人の著者と知り合ったのは10年近く前のことになる。フランセスはハーバード・ビジネススクールの教授で、アンは起業家だ。
出会いのきっかけは、雑誌『フォーブス』にこの本についての記事を書くため、私が2人にインタビューしたことだった。本のテーマは「顧客サービス」。2人が興味をもっていたのは、小売業界において優れたサービスがあまりにも少なく、大部分がサービスとはいえないほどに低レベルなのは、いったい何が原因なのかということだ。
答えはすぐに明らかになった。店舗では、どんな客も逃したくないと思うあまり、すべての客のためにあらゆることをしようとしていたのだ。これではうまくいかないことは誰もがわかっていたが、企業側はそれをやめることができなかった。







