エネルギー動乱化石燃料により電力を生み出している火力発電所 Photo:PIXTA

東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所の再稼働により原発政策に関心が向けられる裏で、火力発電が正念場を迎えている。脱炭素の推進とともに存在感を薄めつつあるが、高まる電力需要に対応するためには化石燃料の存在は無視できない。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、未来がないと考えられてきた石炭火力にスポットを当て、国際競争力の観点から提言する。(アクセンチュア 素材・エネルギー本部マネジング・ディレクター 巽 直樹)

転換点迎える原発
電力安定供給には課題

 2026年1月16日、赤沢亮正経済産業大臣は閣議後の会見において、全国47都道府県の知事に対し、原子力政策への包括的な協力を要請する文書を発出したことに言及した。本要請は、従来の「立地自治体」への働きかけを超え、東京都や大阪府などの「電力消費地」をも対象とした点で、戦後の原子力政策における歴史的なパラダイムシフトと捉えることもできる。

 この異例ともいえる措置は、東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所および北海道電力の泊原子力発電所の再稼働を容認することにおいて、立地知事(新潟県、北海道)が電力消費地に対して、再稼働やバックエンド(使用済み核燃料の処理)に関する理解を求めたことへの政府の対応だ。経産相の消費地への要請とは、まず、住民に対して原子力の必要性を啓発することと立地地域との連携に取り組むこと。次に、廃棄物の最終処分について調査地域の拡大に対して理解を求めていることである。

 特に後者は、原子力発電由来の電力を享受する都市部に対し、バックエンド問題のリスク分担を公式に迫るものであり、「地層処分」の停滞を打破する狙いがあると考えられる。このように政府が原子力政策に力を入れていること自体は、安定供給に向けた前向きな取り組みとして高く評価できる。しかし、次世代原子力や核融合の取り組みは極めて重要ではあるが、電力需給問題における短・中期的な課題の解決策とはならない。

 データセンター(DC)の電力需要が短期的に伸びることが指摘されている中、原子力発電の比率が増えるには長期的な時間軸が必要となるし、変動性の再エネを今後の日本で大規模に増やすことは現実的ではない。トランジション期の需要増に対応する電源として低炭素に貢献するガス火力発電が期待されるが、DCや半導体工場などの高負荷率の需要に対応するベースロードを賄い切れるかどうかは、地域や電力システムの構成などの条件による。

 そこで注目されるのが石炭火力だ。次ページでは、崩壊の危機にある国内の石炭火力発電の現状と課題を詳細に解説する。