Photo by Masato Kato
ホルムズ海峡の封鎖は、世界規模での熾烈な原油獲得競争の引き金を引いた。中央アジア産原油の国内優先供給という異例の決断に踏み切ったINPEXの舞台裏では、一体何が起きていたのか。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、日本最大規模の石油・天然ガス開発企業であるINPEXの滝本俊明副社長に現場で下された緊迫の判断を振り返ってもらうとともに、激変する国際情勢下における今後のエネルギー戦略について話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木文也)
ペルシャ湾経由に打撃も
陸上パイプラインは安定
――2026年12月期の第1四半期決算では、原油高の影響を受けて通期業績予想を上方修正した一方で、オイル&ガス事業のうち中東エリアの生産実績、売上高、販売量はいずれも減少しています。これはやはり、ホルムズ海峡封鎖の影響によるものでしょうか。
原油の生産量が当初の予定を下回っているのは、ご指摘の通りホルムズ海峡封鎖の影響です。当社の原油取扱量は日量50万バレル程度ですが、その約7割を中東産が占めており、ペルシャ湾から出荷するルートについては多少の影響を受けています。
ただし、アブダビ国営石油会社(ADNOC)がペルシャ湾の外(オマーン湾側)へとつながる陸上パイプラインを保有しており、ハブシャン油田基地からフジャイラ港へと陸上輸送されるルート経由の出荷は通常通り行われています。
――アブダビ原油パイプラインの輸送能力は日量最大180万バレルとされていますが、パイプラインに対して中東危機の影響は出ていますか。
ハブシャン油田基地からフジャイラ港につながる陸上パイプラインは最大限利用されており、今回の紛争の影響は受けていないとわれわれは考えています。つまり、中東で生産している全量が出荷できなくなっているわけではありません。影響が出ているのは、通常は湾内から出荷される海上経由のルートであり、その分が影響を受けているということです。なお、当社の純利益の65~70%はオーストラリアの「イクシスLNGプロジェクト」からの売り上げに起因しています。
――ホルムズ海峡の封鎖後、中央アジア産の原油を欧州向けのスポット販売から国内への優先供給に切り替えた経緯を教えてください。
国内優先供給の判断は、過去の石油危機を教訓とした事前の備えがあったからこそ可能だった。しかし、長期化するホルムズ海峡の封鎖は、中東に過度に依存してきた日本のエネルギー戦略そのものの転換を迫っている。海外での油田開発の方針と国内で推進するクリーンエネルギー戦略の未来について明かしてもらった。







