
日揮ホールディングスや千代田化工建設、東洋エンジニアリングの専業エンジニアリング3社の2027年3月期の最終損益は黒字となる見通しだ。ただし、中東情勢の緊迫化によるプロジェクトの採算悪化や工期遅延リスクによる、業績の下押しリスクがくすぶっている。一方で、石炭や石油よりCO2排出量が少ない液化天然ガス(LNG)について、世界では大型案件が相次いでいる。従来の丸抱えEPC(設計・調達・建設)モデルが限界が迎える中で、専業エンジ各社は新たな契約形態も模索している。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、エンジ各社の業績の先行きに加え、グローバルで進むLNGプロジェクトにエンジ各社がどう関わっていくのかを解説する。(エネルギージャーナリスト 宗 敦司)
米国のイラン攻撃で工事中断
日揮・千代田化工を襲う中東リスク
米国とイスラエルによるイラン攻撃と、その報復による中東情勢の緊迫化で、中東地域でプラント建設プロジェクトに従事するエンジニアリング企業にも影響が及びつつある。各社は作業員の安全確保のための一時退避、工事の中断、資機材輸送の代替ルートの確保などに動いており、業績にも影響が出る可能性がある。
千代田化工建設は現在、カタールでLNG建設プロジェクトなど2案件を遂行中だ。イランから攻撃を受けたLNGプラントの増設案件で、作業現場に被害は出なかったものの、攻撃を受けて建設を一時中断し、作業員を避難させた。3月2日には緊急対策本部を設置し、日次で現地状況を把握する体制を構築して対応を図った。その後、安全確保を確認し、徐々に作業員を現地に戻し、現状ではほぼ通常通りの作業量に戻っているという。現時点では業績への影響は限定的としている。
千代田化工建設の2027年3月期の純利益予想は前期比9割減の120億円。減益の要因としては、前期の米ゴールデンパスLNG関連の引当金の戻し入れの反動によるもので、中東情勢による影響は「合理的な算定が困難」として業績予想には織り込んでいない。
今後さらに事態が悪化し、建設工事に被害が出たり工事を再び中断したりした場合には、フォースマジュール(戦争や災害など企業では制御できない事態が起きた際の費用負担などを免除できる契約)条項に基づき追加コストを回収するなど、業績への影響を極力回避していく方針だ。
日揮ホールディングス(HD)はより深刻だ。同社の受注残高(現在進行中の工事契約の総額)のうち45%を中東地域が占め、アラブ首長国連邦(UAE)のLNGプラントやサウジアラビアの原油・ガス分離プラント増強工事、イラクの製油所近代化など複数の大型プロジェクトが遂行中だ。
日揮HDでも作業員の安全確保を図り、一時避難や工事現場へのアクセス制限、人員移動や物資輸送制限をかける対策を実施。3~4月で安全遂行体制を見直した。26年3月期決算では、中東情勢の悪化を受け、70億円の粗利益減を影響額として織り込んだが、EPC(設計・調達・建設)事業全体の採算の改善で、営業損益は353億円の黒字(前期は114億円の赤字)を確保した。
同社は中東情勢について、今年度上期に緊張状態が解消すると見込んでおり、遂行中プロジェクトへの影響は限定的と想定している。ただし、一部のプロジェクトでは進捗の低下を見越し600億円の減収と利益率の減少を織り込んでいる。
両社に比べて東洋エンジニアリングは中東情勢の大きな影響は受けていない。トルクメニスタンやアフリカなどで案件は抱えるものの、紛争の影響が大きい地域での案件がないためだ。ただし、中東情勢を受け、資機材価格の上昇や一部の資産の調達難などが発生しており、経営の逆風になるリスクもある。
中東情勢の緊迫化によりエンジ各社の業績下押しリスクはくすぶっている。一方、中東情勢を受けて、さらに存在感を高める可能性があるのがLNGプロジェクトだ。グローバルでは、大型のLNGプロジェクトの開発が進んでいる。次ページでは、各地で進む大型LNGプロジェクトの一覧を示すほか、日揮HDなどのLNGプロジェクトへの野心的な計画なども明らかにする。また、従来はエンジ各社にとって採算悪化を招くケースもあった大型プロジェクトへの関わり方の変化などについても明らかにしていく。








