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小売電気事業者向けに電源調達や卸売りを手掛けるエネトレードが民事再生手続き開始の申し立てを行った。電力小売業界にとって他人事ではない。エネトレードと“類似のリスク”を抱えた新制度が業界に導入されようとしているからだ。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、新制度の問題点を元東京電力の専門家が解説する。(Smart Energy Consulting代表取締役 椎橋航一郎)
電力業界に衝撃が走った
エネトレードの民事再生
2025年10月、電力小売業界で驚きの声が上がった。小売電気事業者向けに電源調達や卸売りを手掛けるエネトレードが東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行い事業の再生を図る方針が示されたからだ(なお、elDesignなど他のグループ各社は民事再生法の申し立てを行っておらず、健全に事業を継続している)。
エネトレードは、小売電気事業者が抱える電源調達のさまざまな課題に対し、全国規模での電源調達ネットワークを活用し、小売電気事業者のニーズに合わせたサービスを展開してきた。取引量や取引エリア、引き渡しパターンに柔軟に対応した電源卸売りサービスを提供しており、電力市場の健全な発展に重要な役割の一翼を担っていたといえる。その分、同社の民事再生手続き開始のニュースは、業界に少なからずショックを与えた。
帝国データバンクの発表によると、債権者約45人に対し負債総額はおよそ45億円。薄利多売である電力小売事業にとって大きな痛手だ。債権者の一社であるレジルはエネトレードに対する債権(5億9200万円)に対して、取り立て不能または取り立て遅延の恐れがあると判断し、特別損失を計上することとしている。また、同じく債権者の一社であるイーレックスは、エネトレードに対する債権(約10億円)について、取り立て不能または取り立て遅延の恐れが生じたとしてプレスリリースを出している。さらに損失が大きい会社もあるようだ。
民事再生に至った理由について、債権者に対する説明では、同社が電源を固定価格で調達する一方で販売価格は一定のフォーミュラ(計算式)に基づき、燃料価格の変動に連動する。そのため、販売価格の変動要因となるガスの市場価格が下落して逆ザヤに陥ったことから、資金繰りが急速に悪化していったもようである。
リスクリターンに基づき、調達と販売でギャップ(リスク)を取る取引自体、業界の最先端を切り開いてきたトレーディング会社として外部の者がどうこう指摘するようなものではない。だが、結果的に悪い方にリスクが顕在化してしまったものと理解している。
ところが、実は類似のリスクを抱えた新制度の導入を資源エネルギー庁が検討し、小売電気事業者の間で物議を醸している。次ページでは、今後の電力業界を取り巻く新制度の問題点について言及する。







