Photo by Tohru Sasaki
大型プラントの受注と完工に業績を左右され、ひとたび案件がつまずけば巨額損失を抱える――。プラントエンジニアリング会社が長年背負ってきたビジネスモデルの課題の克服に、東洋エンジニアリングが正面から挑んでいる。細井栄治社長が掲げるのは、プラントのEPC(設計・調達・建設)ビジネスを「造って終わり」にせず、運転・保守、増設、更新まで顧客と伴走する「共創型」モデルへの転換だ。長期連載『エネルギー動乱』内の特集『日揮・千代田化工・東洋エンジ、エンジ御三家の反転攻勢』の本稿では、細井社長に東洋エンジニアリングが目指す「超安定経営」の要諦を聞いた。(聞き手/エネルギージャーナリスト 宗 敦司、ダイヤモンド編集部 金山隆一)
受注前のリスク審査を徹底
顧客との信頼関係で価値循環を
――プラントエンジニアリング業界は、業績の変動の激しさが課題です。
業績の変動が激しくなるのは、案件ごとの受注環境や顧客事情、資機材価格、工期遅延といった影響を受けやすいためです。大型プロジェクトは完工まで3~4年かかり、受注時には想定できなかったリスクが膨らみ、巨額損失に転じることもあります。
当社も2025年度にブラジルの発電案件で損失を計上しました。現地法人が不慣れな発電案件を不利な契約条件で受注した上、顧客の経営がプロジェクト遂行中に悪化し、代金回収が困難になったためです。
この反省から、事業ポートフォリオ委員会で案件と人員を管理するようにし、25年1月にはプロジェクト管理本部を設置しました。顧客の信用力、資金調達、工事会社の確保、契約条件などを受注前に徹底的に審査します。私は損失リスクの7割は受注前に決まると考えています。リスクを一方的に負う案件や、遂行人員が足りない案件は取りません。
ただ、東洋エンジニアリングが目指す「超安定経営」は、損失を出さないための守りの面だけではありません。従来のようにプラントを建設して引き渡すだけでなく、事業構想から設計・建設、運転・保守、増設、更新、廃止・撤去まで、プラントのライフサイクル全体で顧客と関係を築いていく考えです。顧客が新しい事業を始めるときや、既存設備の課題に直面したとき、真っ先に相談してもらえる会社への転換を目指しています。
――EPC(設計・調達・建設)ビジネスをやめるわけではない。
従来のEPCは、案件を受注し、プラントを建設して引き渡せば関係が切れる「プロジェクトベース」のフロー型事業でした。今後は、完成後の運転、保守・点検、部品供給、効率改善、設備更新、事業運営、廃止・撤去まで関与する長期契約ベースのストック型事業を増やしていきます。
実際、過去に建設した海外の化学プラントでは、改修して再稼働した後の運転まで担う案件が既に動いています。O&M(運転・保守)を通じて設備を熟知すれば、増設や更新工事も受注しやすくなります。フローからストックへ移り、そこから再び新たなフロー案件が生まれる「価値循環」が最大の狙いです。長期契約ベースの純利益比率は30年度に10%、40年度に40%を目指していきます。
この価値循環は、単に収益を平準化するだけではありません。顧客と長く付き合い、プラントの課題や新たな事業構想を共有することで、当社が顧客にとって継続的な相談相手となります。「造って終わり」のEPCから、顧客と事業を共に育てる共創型のエンジニアリング会社への転換といえます。
――海外事業だけでなく、国内の成長分野にも力を入れていくのでしょうか。
東洋エンジが目指す「超安定経営」を支える具体的な成長分野とは何か。次ページでは、東洋エンジが柱に据える成長事業や注力する市場などについて細井社長に語ってもらう。超安定経営の実現に向けた“成長の4本柱”とは。さらにホルムズ危機やレアアースを巡り、東洋エンジの株価は急騰した。細井社長は株価への受け止めも明らかにした。







