Photo:JIJI
昨年、サントリーホールディングスで10年ぶりに創業家出身者がトップに就任する“大政奉還”があった。創業120年超の歴史を誇る日本屈指の同族企業、サントリーの足跡をダイヤモンドの厳選記事を基にひもといていく。連載『ダイヤモンドで読み解く企業興亡史【サントリー編】』の本稿では、「週刊ダイヤモンド」2014年7月19日号のサントリーのトップ人事に絡む、サントリーホールディングス(HD)の佐治信忠会長兼社長とサントリーHD次期社長の新浪剛史・ローソン会長の発言をまとめた記事を紹介する。同年7月、サントリーHDは次期社長に新浪氏を起用する人事を決定した。創業家出身者以外では初となるサプライズトップ人事の背景を新浪氏と佐治氏の発言からひもとく。(ダイヤモンド編集部)
新浪氏「佐治さんと世界で勝ちたい」
“見えないバランスシート”に注力する
――なぜ今サントリーに?
新浪剛史 ローソンの社長を12年やって「海外に打って出たい」と思っていた。佐治さんからは長年にわたり、何度も何度も声を掛けていただいた。サントリーはグローバルで戦う夢があり、佐治さんは世界に通じる商品を作りたがっている。日本企業の出身者として、佐治さんと一緒に世界で勝ちたい。55歳になり「これが最後のチャンスだ」と決意した。
――経営のスタイルはこれまでと変わるのか。
ローソンでは僕が自ら動くスタイルだった。今度は、下の人にうまく使ってもらえるスタイルに変えたい。僕も営業経験が長いので、現場でトラブルがあったとき、トップがちょっと動けば解決することが多いのは知っている。三菱商事時代も、上司だった小島(順彦現会長)さんに、よくお願いして動いてもらった。
新浪になら頼みやすいという関係を早くみんなと築きたい。(今回買収して傘下に収めた)ビームサントリーに対しても、いかにマット・シャトックCEO(最高経営責任者)のモチベーションを上げて働いてもらうかを考えるのが僕の仕事。佐々木(幹夫・三菱商事相談役)さんに昔言われた「組織の民意を得ろ」という言葉をとても大切にしている。社長が怖いと思われると、社長を使えなくなり、情報も届かなくなる。信頼され、それに応えられるよう、しっかり勉強する。
世界に出るということは、多様なものを受け入れ、それをマネジメントするということ。目の色、肌の色の違う人がグループに入ってきて、いろいろな立場の人みんなが物を言いやすい環境を持つのがグローバル企業の姿であるはず。
その橋渡しをするのが僕の役割。事業業績を上げるのは、各事業会社の社長ががんがんやっていくだろうが、僕は見えない“バランスシート”をどうするかに注力する。
新しいことを起こすときは失敗も成功もある。それを乗り切るための胆力を、サントリーも佐治さんも持っている。もちろん、ビジネスだからリターンは求める。それがサントリーに流れている「やってみなはれ」という価値観だと思う。
それを実践する面白い会社として、サントリーが世界で知られるようになるといい。もともと「やってみなはれ」が面白くて佐治さんとは意気投合したんだよね。「もったいない」と同じように「やってみなはれ」も、世界が知る日本語にしていきたい。
――新浪さんをなぜ社長に選んだのか。
佐治信忠 新浪さんはメーカーと小売りトップ会合で、ずっと昔にお会いして、長い間存じ上げている。出会ったときから、すでに意気投合していた。
「週刊ダイヤモンド」2014年7月19日号







