サントリー・佐治信忠社長の「自己評価は80点」…就任10年目に明かした、自身のマネジメントの振り返りと後継者の条件Photo:SANKEI

昨年、サントリーホールディングスで10年ぶりに創業家出身者がトップに就任する“大政奉還”があった。創業120年超の歴史を誇る日本屈指の同族企業、サントリーの足跡をダイヤモンドの厳選記事を基にひもといていく。連載『ダイヤモンドで読み解く企業興亡史【サントリー編】』の本稿では、「週刊ダイヤモンド」2011年8月27日号のサントリーホールディングス、佐治信忠会長兼社長のインタビュー記事を紹介する。11年に社長就任から10年目を迎えた佐治氏は、当時のインタビューの中で自身のマネジメントを振り返るほか、あと2年で後継者選びに着手する方針を明らかにしていた。前年に破談となったキリンホールディングスとの経営統合についても「私自身は諦めていないんですよ」と語っている。(ダイヤモンド編集部)

震災復興「経済を回して日本を元気に」
「サントリー流」で海外事業を拡大

――大震災発生後、電力の供給不安や包材メーカーの被災による商品の供給能力ダウンなど、メーカーには苦しい時期が続きました。

佐治 電気の問題は現在進行形だし、消費への影響もある。原材料価格も上がっているし、今後も上がるでしょう。でも、日本から逃げるわけにはいかない。

 過度な節電ブームも、考えものです。無駄な電気は消した方がいいが、逆に萎縮してしまったり、昔に戻ることを推奨するのはナンセンス。節電にとどまらず、例えば消費期限内の食品は捨てたりしないで、全体の無駄を改める機会にするなら意味があると思いますが。

――震災後にテレビCMを再開したのは、食品会社の中ではサントリーが一番早かったですね。

佐治 震災の犠牲者を悼むことと、経済を回して日本を元気にすることは別物と捉えるべきです。

 こういうときはむしろカネを使うべき。どう世の中にキャッシュフローを回すかということを企業経営者は考えるべきです。

 うちでは宣伝でも営業でもしっかりカネを使えと言っている。こういうときこそ飲みに出ろ、と。海外事業をやっていて分かるのですが、夜の街が元気な街は国も元気。一杯飲んだら元気が出ますよ、カラ元気でも。

――近年、日本の食品メーカーによる海外企業のM&A(企業の合併・買収)が相次いでいますね。ただ、全てがうまくいっているわけではない。なにか成功の秘訣はあるのでしょうか。

佐治 少々高くても、発展能力があり、マネジメントの質が高く、市場の成長性もある、いい会社を買うことにつきます。(同業他社の)皆さん、オセアニア地域(での買収)に集中されていますが、オーストラリアやニュージーランドは成長著しいものの、日本よりも人口は少ない。うちが米国のペプシ(の製造販売会社)や、仏飲料大手のオランジーナ・シュウェップスなどを買収したのも、人口の多いところを狙ったから。

 それに、今はいい買収案件が山のようにあるわけではなく、いい案件は値段もつり上がるものです。

――海外企業買収戦略の嚆矢となったのは、1980年のペプシ・ボトリング・ベンチャーズ(当時ペプコム)でしたね。あの買収は佐治さん主導で進められた。

佐治 当時、サントリーの海外売り上げはごくわずかしかなく、「500億~1000億円レベルのビジネスをやらなければサントリーはインターナショナルにならない」と主張して買収しました。おかげさまで北米ペプシ事業はピーク時には売り上げが約1400億円程度に伸びた。結果的には、あれはそうとうにリーズナブルな価格での買収でした。

――海外事業を拡大するに当たって、ネスレ(スイス)や米クラフトフーズといったロールモデルがあるのでしょうか。

佐治 ないですよ。サントリーはサントリー流。それぞれの土地でそれぞれのビジネスを効率よくやり、まずはグループ目標として総売り上げ2兆円、海外売り上げ30%、営業利益率2桁を目指します。将来的には売り上げ規模3兆円くらいにしていきたい。

――欧米と比べて、日本の食品メーカーの企業規模は小さ過ぎます。

サントリー・佐治信忠社長の「自己評価は80点」…就任10年目に明かした、自身のマネジメントの振り返りと後継者の条件「週刊ダイヤモンド」2011年8月27日号