8時30分から始まった会議も10時が過ぎた頃、下記の提案を行った。

岡村社長、パソコン事業を東芝本体から切り出して子会社化することを提案します。

パソコンは、2001年ITバブル崩壊のあと急速にコモディティ化(製品やサービスの普及により他社との差別化が困難になり、販売価格を下げることしか販売拡大ができない特徴のない商品になってしまうこと)が進みました。

東芝のパソコン事業は世界のコモディティ化の流れについて行くことができず、2001年度以降赤字が続き、2003年度も大幅赤字が避けられない状況です。▲600億円を超える赤字が見込まれています。ROSも▲8パーセントです。これは売上規模拡大にこだわる経営をしているからです。現状のパソコン事業は破綻状態だと言わざるを得ません。

しかし、東芝ノートパソコンのブランドイメージは非常に高いので、売上規模重視の戦略から利益重視の戦略に変えれば必ず再建できると思います。ついては、パソコン事業を東芝本体から切り出して子会社化することを提案します。子会社化すれば、パソコン経営陣は利益重視に切り替えざるを得なくなり赤字は解消できると思います。

岡村社長、2004年4月から始まる2004年度中期経営計画では、東芝の子会社にして利益重視の経営に変えることを提案します。

 岡村社長は何も言葉を発せず下を向いたままである。沈黙の時間がしばらく続いたあと、経営企画担当の森本泰生副社長の「久保ちゃん、本件は私の預かりとさせてほしい。今日はこれで散会にしよう」との発言でこの会議は終了した。

 この会議は、2004年度中期経営計画スタートに先立ち、重要な経営課題について社長と財務部が確認する会議の一つだった。

 この時、私は財務部管理担当グループマネージャーだった。財務部長の直属の部下で担当部長レベルである。主な担当業務の一つは、中期経営計画を経営企画部と共同で作成することだったため今回の提案をしたものである。

 この11月12日の中計ディスカッション会議は、岡村社長に対する提案の場で、経営企画部側から森本副社長、経営企画部長が出席、財務部側からは笠貞純上席常務、財務部長などが出席した。