私は、1997年から2000年までの3年間、ドイツ・デュッセルドルフにある東芝システム欧州社の副社長経理担当として出向していた。東芝システム欧州社はパソコンなどを扱う欧州拠点であったため、東芝パソコン事業の強みや課題等様々な知識を得たことが、本会議での提案につながったと考えている。

 東芝のパソコン事業はノートブックPC中心に発展してきた。東芝は1985年に世界初のラップトップ・パソコンを欧州で発表し大きな反響を呼んだ。さらに1989年には日本において世界初となるノートパソコンDynabook(ダイナブック)を発売して大評判となった。1990年代に入り、東芝は次々と世界初のDynabookを投入し、これを日米欧で展開していった。

 90年 世界初のHDD搭載PC
 92年 世界初のTFTフルカラーPC、アプリケーション・プレインストールの先駆けPC
 93年 テレビとつながるマルチメディアPC、世界初FDD内蔵サブノートPC
 96年 世界最小・最軽量ミニノートPC等

 東芝が発表するDynabookは、価格の面では決して安くはなかったものの、機能面・品質面での高い評価を維持しながら、常に斬新さ(製品化のスピード)でリードしていき、多くの顧客の支持を得ていた。この結果、東芝は1994年から2000年まで、7年連続ノートパソコンの世界シェアNo1を獲得した。収益面においても東芝の主力事業といえる安定的な利益を上げていた。

 この景色を2001年のITバブル崩壊不況が一変させたのである。ノートパソコンのコモディティ化は、もともとすでにデスクトップパソコンで始まっていた。アメリカのHPやデル・コンピューター、台湾のエイサー、2005年にIBMのPC事業買収で規模を拡大した中国のレノボ等はコモディティ化に対応して圧倒的なコスト競争力を持ち、東芝を始め日本のパソコン・メーカーのシェアを奪って行った。このような世界の市場状況が先の11月12日の会議の背景である。