世界的に株式市場が
不安定化するリスク

 この数年間は、日・米・韓・台の株式インデックスの上昇率が高かった。共通点は、産業界における半導体の製造能力の高さだ。台湾にはTSMCやメディアテック、米国はエヌビディアやマイクロン、AMD、わが国にはキオクシアがある。わが国では、イビデンなど半導体の後工程と呼ばれる分野や、製造装置、関連部材の産業も集積している。

 投資家は、AIで世界経済が加速度的に成長する夢に懸け、関連株を買った。コップに勢いよく水を注ぐかのように、特定の銘柄に投資(投機)資金は集中した。投資家の強欲心は膨張し、AI熱狂相場につながった。

 世界的にレバレッジ投資は増加している。米国金融取引業規制機構によると5月、米国の株式投資目的借入残高は1.42兆ドル(約227兆円)に上った。統計開始以来の最高値だ。相場が過熱し先行き強気な投資家が増え、レバレッジ投資が活発化するのは歴史の常だ。

 注意が必要なのは、相場が本格的に調整すると、借り入れの返済に追われる投資家が増えることだ。債務返済よりも、資産の価格下落スピードは急速だ。金融機関は、不良債権の増加に備えて引当金を積み増す。銀行などの業績懸念も高まる。そのうち、中小の金融機関などの資金繰りがひっ迫し、金融システムの不安定性が高まる。

 今年4月、国際通貨基金が「レバレッジ型のETFが、かく乱要因となるリスクは高まっている」と指摘した。韓国で起きたような相場の逆回転が起きた場合、S&P500やMSCIオールカントリー・インデックスの価格は下落するだろう。この影響で個人投資家(家計)に深刻な打撃が及ぶとの懸念も表明した。ノンバンク融資(プライベート・クレジット)ファンドの焦げ付き(不良債権)の増加も懸念材料だ。

 今すぐそうした展開が起きるとは限らないが、金融市場の環境は変化しつつある。米国でも、インフレ抑制や金融市場の過度な楽観抑制のため、金融政策の調整が進む可能性は高まっている。わが国の金利も上昇するだろう。

 金利上昇は、企業の業績を圧迫し、株式市場を下押しする。何かをきっかけに売りが売りを呼べば、AI成長神話の一大相場が、最終局面に至るだろう。

 株価が高値圏にあるうちに、リスクに備えることが大切だ。韓国でのレバレッジ型ETFの売却に端を発した、パニックは決して他人事ではない。

真壁昭夫さんのプロフィール