金融インサイド#40Photo:PIXTA

2026年3月期の地方銀行の当期純利益は1.75兆円に達し、過去20年での最高益を更新した。しかし、最終利益の表面的な数字だけで各行の持続力を一律に推し量ることはできない。融資の伸びが不動産業へ偏る構造的リスクや、貸出金に擬態した「仕組み貸し出し(SPC融資)」の存在、さらには円債含み損の処理対応でも明暗が分かれる。金利上昇の追い風を持続的な収益力につなげられる地銀はどこか。長期連載『金融インサイド』の本稿で、好決算の裏側に潜む地銀間の残酷な「実力差」の見極め方を解剖する。(和キャピタル専務取締役 伊藤彰一)

純利益は前期比37%増の1.75兆円
金利復活で地銀協決算は過去最高益へ

 2026年3月期の地方銀行の業績は絶好調だった。当期純利益は前期比37%増の1.75兆円となり、過去20年で最高益を更新した(下図参照)。

 何より大きいのは、デフレ期に低収益化の原因となっていた預貸本業が、利益成長の中心に戻ったことである。かつては利ざやの縮小で貸し出しを伸ばしても利益につながりにくかったが、金利のある環境に戻ったことで、同じ貸出残高でも稼ぐ力は大きく変わった。

 その変化が、今回の地銀決算の数字にも表れている。貸出金利息収入は前期比23%増の4.40兆円に拡大した。金利上昇で貸出金利回りが向上したことに加え、貸出金残高が前期比4.4%増加したことが寄与した。

 一方、金利上昇は調達コストも押し上げる。預金金利の上昇に伴い、預金支払利息は1.04兆円へ増加した。もともとゼロ金利だったことから増加率は100%を超えるが、増加額では貸出金利息の伸びを下回っている。この差が、当期の大幅増益の土台となっている。

 加えて、ゼロ金利時代に積み上げてきた経費削減の効果も見逃せない。地銀は長く厳しい低金利環境の中で経費削減に努め、筋肉質なコスト構造を構築してきた。そこに金利上昇と貸し出し増が重なり、高い増益率につながっている。

 この決算だけを見ると、地銀全体に追い風が吹いているように見える。だが、本業復活の持続力は、貸し出しがどこで伸び、どんなリスクを伴うかで大きく変わる。

 地銀全体の貸出残高が前期比4.4%増と伸びる裏側で、その資金はいったいどのマーケットへ流出しているのか。次ページでは、全国地方銀行協会(地銀協)の最新データを基に「業種別貸し出しの増減額」を徹底分析。不動産融資の過熱リスクや、直接保有を避けるために国債を貸出金へと組み替える「仕組み貸し出し」に潜むリスク管理の課題、さらには4兆円規模に膨らむ円債含み損がもたらす地銀選別の未来図を予測する。