地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦#28いよぎんホールディングスと愛媛銀行は、経営統合に関する基本合意について松山市内で記者会見を開いた。左から、佐賀山隆・伊予銀行頭取、三好賢治・いよぎんHD社長、西川義教・愛媛銀行頭取 写真提供:伊予銀行

7月24日、いよぎんホールディングスと愛媛銀行が経営統合で基本合意した。共に松山市に本店を置きながら、行風や提携戦略が異なる「距離のある2行」だけに、業界関係者の驚きは大きい。なぜ両行は電撃統合を決断したのか。長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』#28では、中国・四国の地銀勢力図と、両行が強みとするシップファイナンスの事情から、その狙いと課題を読み解く。さらに、伊予銀行の人事と出世ルートが示唆する広域再編の可能性と、全国の地銀再編への影響を検証する。(ダイヤモンド編集部 高野 豪、永吉泰貴)

接点乏しい県内2行が急接近
いよぎんHDが仕掛けた電撃統合

「経営統合の選択肢はあると思っていたが、相手が愛媛銀行とは全く想像できなかった。候補先に入っていたこと自体が驚きだ」

 ある伊予銀行OBは、いよぎんホールディングス(HD)と愛媛銀行の経営統合に向けた基本合意の一報を、そう受け止める。

 いよぎんHDは伊予銀行を傘下に持ち、7月3日時点の時価総額は自己株式を除いて9609億円と1兆円に迫る。統合後は単純合算で時価総額が1兆円を超え、総資産12.6兆円の地方銀行グループとなる。2027年4月1日をめどに、いよぎんHDの傘下に伊予銀行と愛媛銀行を置く「2バンク体制」で始動する予定だ。

 今回の統合は、両行をよく知る関係者ほど驚きをもって受け止めた。共に松山市に本店を置く一方、行風が異なり、人材交流を含めて接点の乏しい「距離のある2行」だったからだ。

 伊予銀行は16年、阿波銀行、百十四銀行、四国銀行と包括提携「四国アライアンス」を締結。法人取引やデジタル化、共同出資によるファンド運営会社設立などで連携してきた。

 一方、愛媛銀行が提携相手に選んだのは、四国の地銀ではなく、瀬戸内海を挟んだ山口フィナンシャルグループ(FG)だった。20年に「西瀬戸パートナーシップ協定」を結び、シップファイナンス(船舶金融)や地域産業支援などで協業してきた。いよぎんHDとは同じ愛媛県を地盤としながら、互いを提携先に選んでいたわけではなかったのだ。

 統合協議が始まったのは今年3月。いよぎんHDの三好賢治社長が愛媛銀行に協議を持ちかけ、わずか4カ月で基本合意に至った。

 ある金融庁幹部は「以前に対話した際には、両行とも互いとの経営統合について『考えていない』と否定していた」と明かす。三好氏の“ラブコール”を境に、流れが一変したというわけだ。

 しかも、26年7月24日の基本合意から27年4月1日の株式交換までは約8カ月。通常1~2年を要する地銀統合の中でも、最短級のスケジュールだ。

 これまで距離のあった両行は、なぜ統合を決断し、異例の速さで進めるのか。

 次ページでは、中国・四国の地銀勢力図を基に、両行のお家芸であるシップファイナンスを巡る事情を分析する。さらに、伊予銀行の人事から読み取れる広域再編の可能性と、今回の統合が全国の地銀再編に及ぼす影響を検証する。