地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦#22Photo by Yasuo Katatae

地銀再編の“最終決戦ステージ”として、信用金庫の存在感が急浮上している。預金量2兆~3兆円台のメガ信金がひしめく地域では、その強固な顧客基盤は地銀にとって垂ぜんの的だ。金融庁も業態を超えた再編を後押しする制度を整えたが、地銀の思惑通りに事が進むほど単純ではない。長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』#22では、信金が簡単には“地銀化”し得ない理由と、業態超え再編に立ちはだかる高いハードルを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 高野 豪、永吉泰貴)

地銀が欲しがる信金の預金基盤
統合実現に立ちはだかる高い壁

 地銀再編の新たな相手候補に、信用金庫がにわかに浮上している。業態の壁を越えた信金との再編に、一部の地銀が関心を強めているのだ。

 その可能性に言及したのが、あいちフィナンシャルグループの伊藤行記社長である。伊藤社長はダイヤモンド編集部の取材に対し、「信金にも仲間に入ってもらえるといいなと考えているところだ」と語った(本特集#6『あいちFG社長が経営統合の相手に「信金も考えている」と明言!東海3県の再編を“先手必勝”で突き進む拡大野心の全貌』参照)。

 なぜ地銀は、信金との再編に目を向けたのか。

 伊藤社長が重視するのは、地元での存在感だ。「地域で一定の存在感を発揮できること。愛知県で20%のシェアを達成することが一つの目線になる」と話す。

 そこで選択肢に挙がるのが、県内の有力信金を取り込むシナリオだ。

 上表の通り、愛知県には全国有数の“メガ信金”が集まる。預金量全国3位の岡崎信用金庫を筆頭に、14位の碧海信用金庫、15位の瀬戸信用金庫など、預金量2兆~3兆円台の信金が並ぶ。その規模は、第二地銀にも引けを取らない。

 ある地銀関係者は「全国上位のメガ信金は、第二地銀を上回る規模の預金量を抱えている。預貸率で見れば、貸し出しに回っていない預金基盤が眠っており、地域シェアも高い。地銀が欲しがるのは当然だ」と打ち明ける。強固な顧客基盤を持つメガ信金は、競合する地銀にとって喉から手が出るほど欲しい存在なのだ。

 金融庁の動きも呼び水となった。今国会で成立した改正金融機能強化法では、経営統合や合併に伴う一部費用を交付する「資金交付制度」が大幅に拡充された。

 地銀と信金のように業態を超えた合併転換法に基づく再編では、同業態同士の統合・合併より25億円上乗せし、最大75億円を交付する仕組みに改めた。

 もっとも、地銀と信金の再編は容易ではない。信金が地銀になり得ない壁が、幾重にも立ちはだかっているのだ。

 次ページでは、地銀と信金による業態を超えた再編が、なぜ進みにくいのかを検証する。法律上は可能であっても、想定される三つのシナリオを具体的にたどると、制度、税制、ガバナンス、組織理念など、信金が“地銀化”するには越えがたいハードルが浮かび上がる。