Photo:grechka27/gettyimages
地方銀行再編はついに、売れ残り回避を懸けたサバイバル時代に突入した。手をこまねいていれば魅力的な地銀は先に取られ、競争力を失う。そんな危機感が全国の地銀首脳に急速に広がっているのだ。そこで長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』では全30回以上にわたり、再編の主導権を争う地銀、外圧を強める投資ファンド、金融庁の思惑を追い、各地で動きだした再編ドミノの最新事情を明らかにする。#1の本稿では、総資産20兆円の先に浮上する「50兆円クラブ」候補の八大プレーヤーを勢力図と共に描き、陣取り合戦を繰り広げる地銀の未来地図を示す。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
地銀再編は「先手必勝」の戦国時代
各エリアで“50兆円地銀”誕生の芽も
「地銀再編は先手必勝。戦国時代と同じだ。うちが黙っていて、他行がどこかと一緒になれば、選択肢は減っていく」
あいちフィナンシャルグループ(FG)の伊藤行記社長は、ダイヤモンド編集部の取材で今後の地銀再編への意欲をこう語った。
あいちFGは2025年1月、愛知銀行と中京銀行の合併で「あいち銀行」を発足させた。26年5月には三十三フィナンシャルグループ(FG)との経営統合で基本合意。会見では早くも次の地銀の合流を「ウエルカム」と言及したが、その背景には、先に動かなければ再編の主導権を失うという危機感があったのだ。
伊藤社長の言葉通り、地銀業界は今、魅力的なパートナーを求めて再編を急ぐ壮絶な“サバイバル時代”に突入している。
地銀がこぞって規模拡大に動く背景には、金利上昇、人口減少、そしてAIの急速な進展がある。
金利上昇は銀行収益に追い風となる一方、規模が小さければその恩恵を取り込みにくい。人口が減る地域で顧客基盤を維持し、AIで高度化するサイバー攻撃に備えるには、人材やノウハウ、投資余力を確保できるだけの規模が欠かせない。
加えて伊藤社長が指摘する通り、手をこまねいていれば再編の選択肢は狭まっていく。逆に、先手を打って規模を拡大すれば、次の統合でものみ込む側に回れる可能性が高まる。
実際、25年4月に群馬銀行と第四北越フィナンシャルグループ、26年3月にしずおかフィナンシャルグループ(FG)と名古屋銀行、同年5月にあいちFGと三十三FGが、相次いで経営統合に向けた基本合意に至った。県境をまたぐ陣取り合戦が、全国で動きだしているのだ。
同時に、急速に意識されるようになったのが、総資産20兆円という数字だ。
発端は、地銀株を中心に投資するありあけキャピタルの田中克典代表。同氏は地銀が資本市場で存在感を発揮する上で「総資産20兆円程度」が一つの目安になると指摘し、瞬く間に「20兆円クラブ」という言葉が広がった。総資産11兆円の地銀であれば、残り9兆円をどう埋めるかという発想になるわけだ。
だが、20兆円はしょせん、通過点にすぎないだろう。千葉銀行の米本努頭取や群馬銀行の深井彰彦頭取が「スーパーリージョナル(都道府県の枠を超えた経済圏で総合的な金融サービスを提供する広域金融グループ)」を掲げるように、総資産20兆円超の大手地銀ほど広域化への意欲は強いからだ。
つまり今後起ころうとしているのは、全国の上位地銀が一斉に20兆円水準へ到達するような再編ではない。むしろ、総資産20兆円超の地銀が有力地銀を取り込みながらさらに巨大化し、総資産76.2兆円のりそなホールディングスに続く、第二、第三のりそなともいえる広域金融グループが各エリアに生まれる方向に引力が働いているのだ。
では、将来の「50兆円クラブ」候補となる地銀グループはどこなのか。
次ページでは、総資産20兆円の先にある50兆円クラブの有力候補として、1エリア1グループ化を主導する潜在力を持つ八大プレーヤーを勢力図と共に示す。各社の広域化への野心度合い、そして次に進出を狙うエリアはどこか。戦国時代さながらの地銀再編の未来地図を見ていこう。








