サムスン電子の速報決算後
AI相場崩落の前兆らしきものが…

 どれほどAIが重要でも、ブームは永遠に続くものではない。韓国の2社がずっとAI相場を主導し続けることはないだろう。中期的な目線で考えると、どこかでAI相場は本格的な調整局面を迎えるはずだ。

 きっかけのひとつになり得るのは、業績見通しで期待外れな発表があったときだ。00年9月、インテルの業績予想が市場期待を下回り、ITバブルは崩壊した。これをインテル・ショックと呼ぶ。

 当時の米国株式市場はカネ余りの中で、ドットコム銘柄であれば上昇が間違いないとの期待が膨張し、相場は過熱した。大手証券アナリストは、1株当たりの利益予想を上方修正し続けた。予想PER(株価収益率、株価÷1株当たりの予想純利益)は低下し、株価上昇予想を正当化した。

 その代表例が、シスコシステムズだった。1999年のピーク時、1株利益の実績値を使ったPERはなんと約472倍。2000年3月時点で、アナリストの収益予想を使ったPERは約130倍。一般的に知られるPERの適正水準は14~17倍程度にもかかわらずだ。

 これとよく似た現象が韓国でも起きた。7月上旬、過去12カ月の実績ベースのPERはSKハイニックスが約42倍、サムスン電子で25倍前後だった。12カ月先の予想利益を使うと、両社とも5倍前後だ。アナリストも投資家も、両社の収益は会社の計画を上回るペースで増加し続けると思い込んでいる。

 ITバブル崩壊時と状況は異なるものの、AI相場でSKハイニックスやサムスン電子の業績が周囲の期待を下回ると、株式市場は調整するだろう。サムスン電子の速報決算後の株価下落は、その前兆らしきものが見えた。

 サムスン電子が発表した第2四半期(4〜6月期)の速報決算は、営業利益が前年同期比で約19倍(約8兆9400億ウォン)となる過去最高水準を記録した。にもかかわらず市場はこれを「期待外れ」と捉え、同社株価は一時5〜10%近く急落した。

 また、今後、金利上昇の影響で、韓国株を筆頭に世界のAI銘柄が調整するシナリオも考えられる。AI向けメモリーチップの需給バランスが想定外に緩み、2大メーカーの業績拡大ペースが鈍化する可能性もある。

 いずれにせよ、韓国が先導したAI相場はかなり過熱している。相場の変調に備えるため、市場の動向に目を向ける大手投資家は増えていることを、個人投資家も知っておきたい。

真壁昭夫さんのプロフィール