複雑化する日本経済への影響

 最後に、中国経済の減速と二極化が日本経済にどのような影響を及ぼすのか、考えたい。

 まず懸念されるのは、対中輸出を通じたマイナスの影響である。日本の対中輸出は2025年時点で輸出全体の17%を占め、中国は日本にとって米国に次ぐ第2位の輸出相手国である。しかし、中国経済減速の影響で、2021年初をピークに対中輸出数量は減少を続けており、当社試算の季節調整値では2026年4~6月期も1~3月期対比で▲8.4%と減少している。特に、不動産不況の影響を大きく受ける鉄鋼や、国内販売不振や中国地場メーカーの競争力向上などの逆風に直面する自動車などの輸出が下押しされている。中国経済全体の減速、そして、二極化の「影」の部分が悪影響を与えているといえよう。

 注目したいのは、二極化において「光」の部分となっている分野についても、マイナスの影響が見られることだ。例えば、現在好調な半導体関連分野について、半導体製造装置の対中輸出を見ると、中国企業による内製化進展や米国主導の対中輸出規制の影響により、減少傾向となっている。

 もっとも、「光」の部分がもたらすプラスの影響も見逃すべきではない。AIの普及を受けて需要が急増している部材、例えばデータセンター向けの光通信部品やAIサーバーに使われる電子基板材料などについて、中国で新規投資を拡大させている日本企業もある。

 また、消費全体が弱い中でも、差別化された消費財・サービスについては好調との声も聞かれる。例えば、大手回転ずしチェーンのスシローは2026年4月に中国本土で100店舗目を達成し、数時間待ちの行列が絶えないという。スポーツ・アウトドア産業や、ゲーム・アニメ・キャラクターなどのコンテンツ産業などでも、中国での需要拡大を受けて日本企業の新規投資が増えている。

 中国経済の減速が日本経済にとって逆風であることは確かだが、中国で進む経済の二極化により、どの産業・市場に関わるかによって影響が大きく異なる局面に入っており、日本への影響が複雑化してきている。いま、日本企業にとって重要なのは、中国経済全体の成長率だけではなくその中身に注目し、産業・市場別の動向を見極めること、そして、その変化に適応していくことではないだろうか。

(伊藤忠総研 上席主任研究員 玉井芳野)