玉井芳野
今年1月に第2次トランプ政権が始動するやいなや、世界中が「米国第一」の政策に振り回されている。その影響を最も大きく受けているのが、中国であろう。これに対し中国は、米国の対中追加関税発動直後の2月4日、米国から輸入する石炭・液化天然ガス(LNG)などに15%、原油・農業機械・大型自動車などに10%の追加関税を2月10日より賦課すると発表した。

最近、中国経済の減速傾向が鮮明となっている。10月18日に発表された、2024年7~9月期の中国の実質GDP成長率は、前年同期比+4.6%(4~6月期+4.7%)と2四半期連続で減速した。前期からの成長率(前期比)は+0.9%と、4~6月期の+0.5%からは小幅に高まった。ただし、1年分の成長率に換算した前期比年率は+3.6%と、中国政府が掲げる今年の成長率目標「+5%前後」には届かず、力強さを欠いた。

7月15~18日、中国共産党の重要会議、三中全会(中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議)が開催された。5年に一度の党大会で選出された、中国共産党のトップ約370人(約200人の中央委員、約170人の中央候補委員)による中央委員会の全体会議が年1回以上開催される決まりで、慣例として1期5年のうち7回開催されており、その第3回目が三中全会と呼ばれる(中央委員会全体会議は、開催回数を頭につけて「○中全会」と一般に呼ばれる)。

最近、中国の過剰生産能力問題が一段の注目を集めている。契機となったのは、イエレン米財務長官が4月上旬に訪中した際の発言である。イエレン氏は、中国の電気自動車(EV)、リチウム電池、太陽光パネルなどの「新産業」における過剰生産能力が、世界の価格をゆがめ、米国および世界の企業や雇用に悪影響を及ぼすとして懸念を表明した。こうした米国の動きに先立って、すでに欧州委員会が2023年10月、中国から輸入されるEVについて、中国政府の補助金が市場を歪曲しEUのEV産業に悪影響を与えているとして調査を開始した。

中国では2月10日から17日にかけ、旧正月である春節休暇を迎えた。今年の春節休暇中の飲食や旅行などのサービス消費は、一見すると好調だった。しかし、別のデータからは、中国経済の停滞を受けた消費者の節約志向が示唆される。

昨年12月7日、中国政府はゼロコロナ政策の大幅緩和にかじを切った。高リスク地域での移動制限や入国時の隔離は維持するも、PCR検査の縮小、無症状・軽症者の自宅隔離容認、都市や省を跨ぐ移動に対する陰性証明・健康コードの提示不要化など、踏み込んだ措置となった。

再び中国経済の減速懸念が高まっている。甘粛省など一部地域での散発的なコロナ感染拡大による経済活動停滞に加え、不動産市場の悪化が影響したとみられる。今回の不動産市場悪化の背景には、6月末以降、中国各地で広がった、建設中住宅の購入者による住宅ローン返済拒否の動きがある。
