Photo by Yoshihisa Wada
湘南美容クリニックで知られる日本最大の美容医療グループ、SBCメディカルグループホールディングスの相川佳之CEO(最高経営責任者)が取材に応じ、激変する美容医療市場の裏側を語った。コロナ禍の「美容医療バブル」を経て拡大した業界は現在、ドクターの過剰乱立による「増収減益」という淘汰の正念場を迎えている。特集『狂乱の美容医療 膨張市場の「闇」と錬金術』の#2で、美容医療の絶対王者が「最大の敵」を見据えた生存戦略の全てを明かす。(聞き手/フリーライター 村上 力)
「コロナバブル」で市場規模が急拡大
その後ドクター過剰乱立の淘汰フェーズへ
――SBCメディカルグループホールディングスは2024年に米ナスダック市場に上場し、25年12月期の売上高が約260億円、営業利益が約100億円でした。これは日本国内のクリニック286院からのサービスフィー収入を軸としたビジネスモデルによるものですね。
はい、これは経営支援を行うホールディングス側の数字であり、グループ全体のクリニック自体の売上高ベースでは約1700億円になります。大体その十数%がサービスフィーとしてホールディングスに入るという形です。
――美容医療業界の中で、SBCメディカルグループが他を圧倒して成長を続けられてきた理由はどこにあるのでしょうか。
一言で言えば、「価格優位性」と「圧倒的なリピーターの多さ」です。現在、毎月の売上高の72%をリピーターのお客さまが占めています。新規集客の波に左右されず、この高いリピート率に支えられているのが最大の強みです。
また、多店舗展開によるスケールメリットを生かし、レーザー機器を数百台単位で一括購入したり、円安下でも材料を安く仕入れたりできる交渉力も大きな武器になっています。
――美容医療セクター全体が経済的にも消費者の関心事としても非常に大きな存在になりつつありますが、現在の市場環境をどのように見ていますか。
当グループは2000年に湘南美容クリニックを設立して以来、順調に成長してきましたが、大きな転換点となったのは20年のコロナ禍です。リモートワークの普及やマスク着用が日常になったことで美容医療を受けやすい環境となり、「美容医療バブル」が起きました。
20年から23年の間に、それまで約3000億円台だった市場規模が一気に5000億~6000億円規模に拡大したとみています。それに伴い、一般診療から美容医療へ移るドクターも激増しました。ドクターの数が3倍、開業医が1.4倍になった一方で、マーケットの成長は2倍にとどまり、結果として競争が激化しました。
――需要の伸びに対して、供給(プレーヤー)が過剰になってきているのですね。
業界全体の経済的なピークは23年でした。24年以降は明らかに流れが変わり、開業医の廃業が増え、美容から一般医療へ戻るドクターも増えています。当グループの採用応募数も、かつての年間300人から現在は約200人へと減少しました。
これまでは順調に右肩上がりでしたが、今は業界全体が「増収減益」のような苦しいフェーズ、まさに正念場に差しかかっていると認識しています。
空前の大ブームを経て、いまや「増収減益」という未曽有の苦しい淘汰フェーズに突入した日本の美容医療業界。その頂点に君臨する相川氏が、次ページで「真の脅威」の正体を明かす。かつて売り上げの大半を占めた外科手術の凋落と、SNS集客に頼る個人開業医の厳しい現実、そして日本のクリニックをつぶしにかかる「驚異の低価格を引っ提げた海外勢」の襲来とは――。







