Photo by Takeshi Shigeishi
危険な施術や悪徳商法などが横行する美容医療業界で、「優良クリニック」と「悪徳クリニック」を一般の消費者はどう見分けるべきか。美容医療専門予約サイト「美容ヒフコ」代表の酒井あい氏自身、未承認の「bFGF注射」で顔が変形し、現在も300万円以上の修正治療を続ける当事者だ。特集『狂乱の美容医療 膨張市場の「闇」と錬金術』の#10では、酒井氏が学会の形骸化、未承認薬の無秩序な輸入、SNSによる誇大広告や口コミ操作など業界の闇を告発。自分の身を守るための具体的なクリニック選びのチェックポイントを語る。(聞き手/フリーライター 村上 力)
「悪徳クリニック」を見破るすべはあるか
美容医療予約サイト代表が語る業界の裏
――「美容ヒフコ」を立ち上げた経緯を教えてください。
私自身が美容医療にすごくはまっていた時期に、自分が受けたい施術、さらに機器まで決まっていたため、その機器を自分が通いやすいエリアのどのクリニックで受けられるのかを、一つ一つインターネットで調べるのが大変だったことがきっかけです。
クリニックによってメニュー名や表記の仕方も違えば、同じ機器でもショット数や価格が異なります。もちろん価格の安さだけでクリニックを選ぶことにはリスクがありますが、同じ機器でショット数などの条件も同じであれば、価格を比較したいという方もいると思います。そうした情報を整理し、一気に比較できるプラットフォームを作りたいという思いからスタートしました。
――酒井さんご自身も、美容医療でさまざまな経験をされてきたのですか。
私自身は、素晴らしい先生に巡り合うことができて良い体験が多かったのですが、実は一度、現在も治療が続いている深刻な経験もしています。美容ヒフコを始めたばかりの頃、リサーチも兼ねて友人のインフルエンサーに紹介されて、ある美容医療クリニックに行ったんです。 そこで医師から「プレミアムPRP(多血小板血漿)」という施術を勧められました。PRPは自分の血液成分を肌に戻す施術ですが、「プレミアム」と付くのでさらに良いバージョンなのだと思ってしまいました。
その時、しこりや過剰な膨らみといったリスクについて十分な説明はなく、医師からは「1万人以上に施術して失敗は一度もない」と説明されました。その言葉を聞き、私は安全性の高い施術なのだと受け止めてしまったんです。
――実際に施術を受けたのですか。
はい。目の下とほうれい線、頬に施術を受けたのですが、実はその「プレミアムPRP」には、科研製薬の外用薬「フィブラストスプレー」が添加されていました。有効成分は、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)製剤のトラフェルミンです。この薬は、やけどなどに吹きかけて、組織の修復を促す目的で承認されています。PRPに添加して皮下へ注入する使い方については、有効性や安全性が確立されていません。メーカーも承認された用法と用量を守るよう注意を呼び掛けています。
施術後、私の顔全体がどんどん大きくなり、パンパンに膨れ上がるようになりました。数カ所に硬いしこりもでき、口角を上げようとしても自然に笑えないほどでした。
その後、bFGFには線維芽細胞の増殖や血管新生を促す作用があり、PRPと一緒に注入した後に、硬いしこりや過剰な皮膚の盛り上がりが生じた例が報告されていることを知りました。脂肪組織にも影響する可能性があるというメーカーの資料を読み、私の顔でも同じような反応が起きたのではないかと不安になりました。
――担当した医師はどのような対応をしたのでしょうか。
自身も大手クリニックのずさんな施術により顔がパンパンに腫れ上がり、300万円を超える修正治療を続ける当事者となった酒井氏。次ページでは、未承認薬「bFGF」の恐怖と担当医の暴言、批判意見を封殺する美容医療学会の闇、そしてSNS広告や口コミ操作のわなから身を守る「クリニック選びの心得」を明かしてもらった。







