「エンジンを強くすると、更に重くなる」謎の禅問答

 パワーが足りなければターボを付ければ良いのでは?

 軽自動車のジムニーにはターボが付いている。車重が増えたのなら、その分だけ力を増やす。誰もが思い付く、実に単純明快な解決策ではあるまいか。

 開発責任者の佐々木さんにそう問うと、意外な答えが返ってきた。「エンジンを強くすると、クルマはさらに重くなるんです」と。「重くなったのなら力を増やせば良いのでは?」そう尋ねたら、力を増やすと更に重くなる、と。試乗会場でまさかの禅問答。 ところが質問を重ねていくと、この一見矛盾した回答にこそノマドというクルマの本質が隠されていることが見えてきた。

スズキ 商品企画本部 四輪インドB・C・Dセグメント商品統括部 チーフエンジニア 佐々木貴光さんスズキ 商品企画本部 四輪インドB・C・Dセグメント商品統括部 チーフエンジニア 佐々木貴光さん Photo by AD Takahashi

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):ノマドのエンジンはシエラと同じですよね。100kgも重くなっているのに同じエンジン。排気量を上げるとかギア比を変えるとか、あるいはターボを付けてしまうとか。そうした選択肢はなかったのですか?

スズキ 商品企画本部 四輪インドB・C・Dセグメント商品統括部 チーフエンジニア 佐々木貴光さん(以下、佐):はい。ノマドとシエラはまったく同じエンジンです。5ドア化するに際し、どんなパワートレインにするかはもちろん検討しました。排気量を上げた方が良いのか、ギア比を変えた方が良いのか、いろいろとシミュレーションをしています。

 今の時代、燃費は無視することができません。何しろ企業平均燃費(CAFE規制)があり、企業として達成しなければならない燃費目標がありますから。

 悪路をガンガン走れるようにするだけなら、フェルさんの言う通り思い切ってギア比を落とすという方法もあるでしょう。そうすれば走りは良くなります。でも今度は高速道路でエンジンが高回転に張り付いて燃費が悪くなる。音もうるさくなる。良いところもあれば、悪くなるところも出てくるんです。

F:まさにあちらを立てればこちらが立たず、ですね。