K14Cターボを手がけたエンジンのプロの判断

F:そこまで言い切れるのは、佐々木さんご自身がエンジン畑を歩いてきたからですか?

佐:はい。私はずっとエンジンの実験をやってきました。エンジン単体をベンチにかけて開発適合を行い、その後は車両に載せた状態でドライバビリティーを見たり、エンジンコントローラーのチューニングをしたり、排ガスを見たりしていました。K14C型ターボなんかも、やってきました。今のエンジン開発は、排出ガスと熱効率が大きな課題です。排出ガス規制は欧州の法規をベースに世界へ広がっていきます。年々厳しくなっているんです。

≪K14C型は、名車スイフトスポーツに搭載された1.4L水冷直列4気筒直噴ターボエンジンだ。低回転からモリモリとトルクの出る優れた設計である。佐々木さんは長年エンジン開発に携わってきた、バリバリのエンジン屋さんなのだ。当然ターボの長短も知り尽くしている。

 ノマドにターボを積まなかったのは、“積んだ先に何が起きるか”まで見越した上での判断だったのだ。ノマドは“不満が出そうな部分”を新しい装備によって力ずくで押し潰すクルマではないということだろう。

 では、5ドア化によって生じたほかの不都合には、どう対応していったのか。≫

小回りの代償「最小回転半径80cm増」の意味

F:ホイールベースを340mm伸ばしたことで、最小回転半径が一気に大きくなりました。林道や狭い場所での取り回しを考えると、ここは何とかならなかったのでしょうか。

佐:ここは構造的にちょっと難しいですね。タイヤの切れ角は変わっていませんから、ホイールベースを伸ばした分、最小回転半径はどうしても大きくなります。

 ≪シエラの最小回転半径は4.9m。それがノマドでは5.7mになる。実に80cm増だ。「たかが80cm」と侮るなかれ。狭い駐車場やつづら折れの林道では、この差が切り返しの回数となって表れる。後席へ普通に乗り降りできるようにするため、ホイールベースを340mm伸ばした。当然、その代償は小回り性能に跳ね返ってくる。ここは技術者の工夫だけでサクッと帳消しにできる話ではないのである。≫