格差社会の景気後退「ゲーテッド・リセッション」時代に必要な政策『富裕層に課税を』集会(2026年3月)で演説するバーニー・サンダース上院議員。同様の主張のデモや集会が多くなっている。
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驚くべき分断が世界で生じている。労働者層が経済的打撃を受ける一方、株価や企業収益をベースとした収入をもつ富裕層では好況が続く。いわば「ゲート」で分けられた2つの層の景況の違いは従来指標では測れないと元世界銀行上級副総裁は説き、必要な政策を提示する。

 米国の労働市場で奇妙なことが起きている。労働統計局が発表した最新のデータによれば、米国では7月に2万3000人分の雇用が失われたが、実は失業率は4.1%まで低下している。一見すると矛盾しているが、どのような事情なのか、もっと詳しく見てみよう。

 米国では、積極的に仕事を探していなければ「失業者」としてカウントされない。ところが今日では雇用市場があまりにも低迷しているので、人々は求職活動を諦めてしまっている。エコノミストらはこれを「就業意欲喪失」効果と呼ぶ。結果として、労働需要が減少している中でも、労働供給がそれ以上のペースで縮小するせいで、失業率は低下する場合がありうる。2025年11月以降、米国の労働人口は200万人以上も減少したのではないかという試算があるほどだ。

 先進国の水準から見ると、米国の貧困率は高い。2024年には、米国民の10.6%が貧困ライン以下の生活を送っている。貧困の基準は4人世帯で年間所得3万1812ドル未満と定義されているが、この数字は問題の本当の大きさを反映していない可能性があると指摘する識者もいる。「貧困」には、所得ベースの単一の基準では捕捉できない多くの側面があるからだ。

 さらに、貧困ライン以上の労働者でも実質所得の低下を実感している者は多い。米国の平均賃金はこの1年で3.2%上昇したが、インフレ率は約3.5%で推移している。仕事を見つけにくくなり、労働者の購買力が低下しているとすれば、経済がリセッションに向かいつつあると懸念する十分な理由になりそうだ。ところが現実には、少なくとも従来の意味においては、そうした状況ではない。

 「リセッション(景気後退)」という言葉は、通常、国全体として経済活動が低下していくことを意味する。よく使われる基準は、「2四半期連続での実質GDP(国内総生産)の減少」だ。この基準からすると、米国経済は今のところリセッションには陥っていない。その理由は主として、AI(人工知能)を筆頭に一部のセクターにおける急速な成長が、それ以外の不振を相殺しているからだ。

 結果として、驚くべき分断が生じている。米国の労働者が打撃を受けているにもかかわらず、株価や企業収益をベースとする収入を得ている者は好景気に沸いている。注目すべきは、失業と労働市況の劣化を伝える報道と並行して、米株式市場が高騰している点だ。上述の労働統計が発表された同じ日に、たとえばS&P500は47.68ポイント、すなわち0.6%上昇している。

 二つのトレンドは無関係ではない。企業が人員削減という形で新たなテクノロジーに対応すれば、人件費を削減でき、収益は改善する。米国の雇用減少が報じられる中で、テクノロジー銘柄は特に好調で、エヌビディアは2.3%、ブロードコムは1.7%上昇している。