電力・通信・原子力に潜む「情報動員」のリスク
もう一つ考えなければならないのが、電力、通信、原子力など重要インフラの安全保障である。
ここで重要になるのが、中国の国家情報法第7条だ。同法は、中国の組織と公民に国家情報活動への支持、援助、協力を求めている。
この法律が国外にいる中国国民へ具体的にどこまで強制力を持つかについては、慎重な検討が必要だ。
少なくとも、「すべての在外中国人が中国政府の指示で動く」と一般化することはできない。一方で、日本の重要インフラや機密情報を扱う制度を設計する際、外国政府の情報法制や国家との関係性をリスク要因として考慮する必要があることも事実である。
日本では2025年5月、重要経済安保情報保護活用法が施行され、セキュリティ・クリアランス制度が導入された。
安全保障上重要な経済情報を「重要経済安保情報」に指定し、それを扱う事業者や従業員について適格性を確認する仕組みである。
適性評価では、外国との関係、外国政府関係者との接触、外国からの働きかけ、渡航歴、犯罪歴などが確認される。
また経済安全保障推進法では、電力や通信など基幹インフラにおける重要設備の導入・維持管理について、政府が事前審査する制度も設けられている。
方向性は正しいが、これで十分だとは言えない。
セキュリティ・クリアランスの対象となるのは、指定された重要経済安保情報を実際に取り扱う人員である。重要インフラ施設で働くすべての技術者や作業員が審査対象になるわけではない。
また、適性評価は外国籍かどうかだけで決めるものでもない。むしろ、国籍だけに依存した安全保障対策には限界がある。
日本人であっても情報漏洩や内部不正を行う可能性はあるし、外国籍であることだけを理由に危険人物とみなすこともできない。
必要なのは、国籍による一律排除ではなく、どの情報に誰がアクセスできるかを厳格に限定し、機密情報を区分し、職務を分離し、継続的に内部リスクを監視する制度である。







