そこで、私が決めるための確認役を引き受けて、「こっちのアイデアでいいですね。では、これで進めますよ」と進行することにしました。

 漫才のように二人で完結するものを作るのと、大勢のスタッフを動かしてイベントを作るのは違います。そこで、その二つをつなぐような役割を引き受けたわけです。

 その結果、最初は「アドバイザー」の立ち位置で参加しましたが、演者のお二人だけでなく制作チームとも話がしやすいよう「演出」という肩書をつけてもらいました。

 求められる役割は状況に応じてさまざまです。だけど、決してその場を取り仕切って私のやりやすいように仕事をすることはしません。

「何者かわからない」場所で
ゼロから信頼を得る

 アウェイと思えるような場所に赴き、徐々に信頼を得られるのはうれしいものです。

 東海オンエアのイベントに参加したときも、付き合いのあったとしみつさん以外のメンバーは、私が何者かわからずちょっと警戒していたようでした。特に最初の顔合わせでご一緒できなかったメンバーは、個別にお話する機会も限られていたため、ずっと距離感があった気がします。

 しかし、イベント終了後の打ち上げで、そのメンバーが「石井さんって、すごい人なんですか?」と話しかけてくれたのです。「いや、すごくないと思いますけど」と答えると、「いや、すごいですね」と言ってくださって。

 ちょっとしたやり取りですが、仕事を通じて信頼してくれたのだと感じられました。

 刺激的なという点では、『連続ドラマWゴールデンカムイ─北海道刺青囚人争奪編─』(WOWOW)のオーディオコメンタリー版でディレクターを担当したことも、新鮮な経験でした。

 キャストがラジオのようにMCとゲストになって、撮影の裏話や演者さんの素顔に迫るトークを展開する少し変わった企画です。

 呼んでくれたスタッフさんは当然私のことを知っていますが、俳優のみなさんにとっては、よくわからない「音声を録る謎のディレクター」です。

 スケジュールがタイトで自分から経歴を話して知ってもらうような時間がなく、何者かわからないまま仕事をしました。

 そこにいるのが当たり前のような顔をせず、しっかりご挨拶はして、丁寧に企画趣旨などを説明する。ディレクターの原点に立ち返れたような気がしています。