日本の急速充電器は、メーカーごとに接続を確認

F:しかし日本の市場で日本専用車として売る以上、日本の道路事情や充電事情、また運転支援システムがキチンと動くか、という“検証”が必要になります。日本での試験はどのように?

東:プロトタイプができたのが2025年3月頃。そこから日本に試験車を持ち込んで走らせています。走行性能を見るだけではなくて、ADAS(先進運転支援システム)が日本の道路環境でちゃんと機能するかという確認もしていますし、EVですから充電の接続試験もかなりやっています。

 充電に関しては、日本の急速充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)は充電器のメーカーがいろいろありますから、同じ規格だから全部そのままつながる、というほど単純ではありません。メーカーごとに接続を確認して、かなり高い確率で問題なく充電できるところまで繰り返し試験しています。日本で売る以上は、「中国で問題なく走ったからそれでOK」という訳にはいきませんので。

F:なるほど。中国で造って船に積み、「はいこれが日本仕様です」と持って来たわけではないと。

炎上ネタをもう一つ「個人情報が中国に抜かれる」

F:と、ここまで聞いても、まだ中国車に対する強烈な炎上ネタが一つ残っています。むしろこれが一番根深いかもしれません。「中国車に乗ると、個人情報を中国に抜かれる」という話です。いまのクルマはOTA(無線通信によるソフトウエア更新)でソフトを書き換えますし、通信機能も積んでいる。中国の本社に、誰がどこをどう走ったか、こんな情報を抜かれるんじゃないかという疑惑です。

東:OTAを行う以上、メーカー側で車体番号を把握しているのは事実です。「この車体番号からこの車体番号までの車両に、このタイミングでアップデートをかける」ということは当然やります。

 ただ、その車体番号のクルマに誰が乗っているか、という情報は別です。車体番号とお客様の氏名などを紐付けた情報は日本側で管理していて、中国本社側からはアクセスできません。中国側が持っている車両の情報を見たところで、「この車体番号の所有者は誰々さんだ」と分かる仕組みにはなっていないんです。

F:そこは中国本社からアクセスできない?

東:できません。

F:まあ、ご心配なさっておられる自宅警備員の皆様の情報なぞ、そもそも中国政府は興味ないと思いますが(笑)。

担当編集アヤノ:ちょっとフェルさん!

F:とはいえ、中国企業に自分のデータを預けること自体が嫌だ、信用できない、という人の感覚も理解できます。やっぱりちょっと気味が悪い。

東:そこはもう考え方ですからね。ただ、「BYDに乗ったら個人情報が全部中国に抜かれる」と事実のように言われてしまうと、我々としては「それは違います」と説明する必要があります。

BYD Auto Japan 代表取締役社長 東福寺厚樹さんPhoto by A.T.