コンビニの牛乳パックまで、中国へ持ち帰った
東:そこは調査ですよ。徹底して調べていますから。ラッコの開発が決まった2024年初頭、開発チームの主だったメンバー15人くらいが日本へ来て、1カ月ほど滞在していきました。そこで軽自動車が実際にどう使われているのか、日本人は軽に何を求めているのかを、うんと細かく調査しています。
例えばコンビニへ行って、日本人がどんな飲み物や食べ物を買うのか。それを買った後、クルマの中のどこにどう置くのか。そういうところまで観察していました。しかも見るだけではなく、コンビニで売っている容器そのものを買って、中国へ持ち帰っているんです。四角い500mlの牛乳パックなんかもそうです。日本で普通に売られているものが、実際に車内の収納へきちんと入るか。そういうところまで確認しているのです。
軽自動車というのは、単にボディを小さくすればできるものではありません。限られた寸法の中で、日本のお客様がどう使うか。それを正しく理解しないと、日本で使いやすい軽には絶対になりません。その辺は徹底的に研究しています。
技術者を引き抜いて丸パクリ、の方がまだ分かりやすい
F:なるほど。日本人技術者を大量に引き抜いて、日産やホンダの技術をマルッと持っていった――といった刺激的な話とは、だいぶ違いますね。若い中国人の開発者が日本へやって来て、街を走る軽を見て、日本人の使い方を観察して、挙げ句の果てにはコンビニの牛乳パックまで中国へ持ち帰ってしっかり研究した“成果物”がラッコだった、と。
でもこれ、逆に言うととても恐ろしい話ですよね。むしろ技術者を引き抜いて丸パクリ、という方が分かりやすく、「なーんだ、やっぱりな」で済んでしまう。人の造ったものをしっかり観察して、良いところは徹底的に学んで、それを猛烈な速度で自分たちの製品に落とし込む。日本メーカーからすれば、こちらの方がよほど厄介かもしれない。
東:先達から学べるものは全部学ぼう、という考え方だと思います。他社の軽自動車もかなり研究していますし、良いものがあれば取り入れる。リアシートの使い方ひとつ取っても、日本の軽には長い時間をかけて磨き込んできた工夫があります。ただ、それを真似して終わりではありません。鋼板の使い方や車体の造り込みは、小型の乗用EVを造るのと全く同じ考え方でやっています。「軽だから安く簡単に造る」という発想ではないんですね。
F:なるほど。「日産の技術者を引き抜いて造った」という言い方には、いささか語弊がある。しかし他社の軽は徹底的に研究して、良いところは遠慮なく取り込むと。
日本メーカーにとってはイヤな相手が出てきたものですね。これまでの輸入車メーカーの多くは、小手先程度のローカライズにとどまっていましたから。







