OECDも2026年の対フランス経済審査で、イノベーション政策の実効性や産業競争力の強化を課題に挙げている。無数の企業が競争を通じて成長するより、国家が優れた企業を選んで支援するほうに重心があるためだ。

 この構造は財政問題とも無縁ではない。エリートが上から設計した制度は、その見直しもまた上からの押しつけと受け止められやすく、国民から反発を招きやすい。ドイツにも、既存の成功企業を支える仕組みが新しい企業の台頭を阻むという問題はある。

 両国ともに、過去の成功モデルが弊害になっている。

なぜギリシャより国債利回りが高いのか

 フランスの国債利回りがイタリアやギリシャを上回ったことは、フランスの財政や政治情勢に対する市場の警戒が強まっていることを示している。しかも、債務残高の対GDP比では、イタリアやギリシャのほうが高い。鍵は、債務の「方向性」にある。

 南欧諸国の一部は、債務危機の後、市場からの圧力を受けて財政再建や構造改革を進め、財政赤字の縮小に取り組んできた。

 一方、フランスは、「欧州の中核国」として市場の信頼を得てきたこともあり、財政再建や構造改革が先送りされやすかった。フランス国債はユーロ圏の主要国の国債として、これまで投資家から一定の信頼を得てきた。しかし、財政悪化や政治の不安定化を背景に、その信頼が揺らぎ始めている。

 加えて、国債の「保有構造」の違いも大きい。フランス国債は、50%超を非居住者(ただし、ユーロ圏居住者や金融機関を含む)が保有しており、海外投資家の判断に影響されやすい。政治不安を背景に売り圧力が強まれば、国債価格が下落し、利回りが上昇する可能性がある。

 金利の上昇は財政再建をさらに難しくする。フランスの10年物国債利回りは現在、5%近辺まで上昇する一方、経済成長が低迷している。高い金利での借り換えが続けば、利払い負担は徐々に膨らむ。

 国の利払い費は2026年の約630億ユーロから、27年には約730億ユーロへと、1年で100億ユーロ以上増える見通しだ。財政再建どころか、金利の上昇に追いつくだけで必死という状態だ。