もう一つ、フランス政治において最も大きな課題となっているのが、年金をはじめとする社会保障制度だ。
マクロン政権は2023年に年金受給開始年齢を62歳から64歳へ引き上げる改革を成立させたが、その後の政治対立で、改革の実施は一部停止された。「デモの国」であるフランスでは、財政再建の必要性が認識されていても、具体的な負担の見直しとなると政治デモが吹き荒れて合意が困難である
市場は2027年の大統領選挙を警戒している。極右・極左勢力が中道派に代わる選択肢として台頭するなか、市場は左右双方のポピュリズム的な財政公約を不安視している。どの勢力が政権を担うにせよ、政治の分断が続けば財政再建のための痛みを伴う改革を実施できる保証はない。
過去最大となる2027年の国債発行計画(3400億ユーロ)も、市場の不安に拍車をかけている。
左右どちらの政権になろうとも、議会が分裂すれば痛みを伴う財政政策の実施は難しい。市場はフランス経済の未来に悲観的なようだ。
エリートが動かすフランス、地方企業が支えるドイツ
経済を支える社会制度において、独仏で大きな違いがある。
フランスでは、国家の中枢に集まるエリートが経済や行政の重要な意思決定を担う傾向が強い。「グランゼコール」と呼ばれる高等教育機関は、政界、官界、財界の指導者を数多く輩出してきた。経済活動も首都への集中が著しく、イル=ド=フランス地域圏(パリとその周辺からなる地域)がフランス全体のGDPの約3割を占める。
それに対してドイツは、ベルリン、ミュンヘン、フランクフルト、ハンブルク、シュトゥットガルトなど、複数の都市に産業拠点が分散する。連邦制のもとで、各州が教育や行政に大きな権限を持ち、企業と職業学校が連携する職業訓練制度が専門人材を育ててきた。
フランスの地方にも航空宇宙産業や半導体産業などの先端産業集積地があり、近年はAI分野でも有力なスタートアップが誕生している。ただし、誕生した企業を国際競争力のある規模まで育てるのがあまり得意ではない。







