Photo:SANKEI
高市政権の一年で長期金利が3%台まで上昇したのは、積極財政による財政悪化の懸念とともに、首相が日銀に金融緩和維持を求めていると市場の不安がタームプレミアムを拡大させたことがある。政府は日本経済がは低利政策が財政を支えたアベノミクスの時代と異なっていることを認識する必要がある。特集『高市政権1年 サナエノミクスの功罪』の本稿では、金利上昇の背景と国債市場の今後の見通しを解説する。
(オールニッポンアセットマネジメントストラテジスト/ウォールズブリッジ代表 森田長太郎)
利上げが遅れる懸念で進まない中、将来の大幅利上げ予想が
インフレ予想やタームプレミアム拡大の要因に
高市政権が昨年10月21日にスタートした時点での日本国債(JGB)10年物金利の水準は1.67%だった。だが今年10月7日には3.105%まで上昇、直近は2.900%前後での推移だが、高市政権の1年で実に153bp(ベーシスポイント=1.53%ポイント)も上昇したことになる。
米国債、ドイツ国債の10年物金利も上昇してきたが、1年前と比べると、米国債は直近のピーク(10月5日)で118bp、ドイツ国債は79bpの上昇であり、日本国債金利の上昇幅はそれらを大きく上回る。昨年10月以前の1年間の上昇幅は約70bpだったので、それと比べてもやはり高市政権下における長期金利の上昇幅は大きい。
この大きな市場の変化を目にすると、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」のうち「積極財政」の部分への市場の懸念が急激な長期金利上昇を引き起こしたとの見方がされるところだ。
その面はあるが、ただ、事はそれほど単純ではない。
この1年の長期金利上昇の内訳を改めて見ると、同様に長期金利が上昇している米国と際立って違うのは、実質短期金利の予想だ。米国では、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げへの転換が長期金利上昇の最大の要因なのに対して、日本では実質短期金利予想はこの1年間で逆に後退している。
つまり市場が高市政権では日本銀行の利上げが進まないという見方が支配的になったためで、インフレ局面が続く中、結果的に将来、大きな利上げが必要になるということから、インフレ予想やタームプレミアム拡大が、長期金利を押し上げている面があるのだ。
「アベノミクス」を意識して、財政拡大・金融緩和という財政・金融政策両面での後押しで成長を実現させようという「サナエノミクス」だが、当時とは経済状況がデフレからインフレ局面に変わる中、高市首相が利上げをけん制しているとの市場の疑念が、むしろ長期金利上昇の一因になり、看板の積極財政の「壁」になる皮肉な状況といってもいい。







