日本経済停滞の原因は「人口減少ではなく投資不足」、高市政権ブレーン・会田卓司氏が語る370兆円成長戦略の勝算とリフレ政策の終焉Photo by Kiyoshi Takimoto

高市政権が打ち出した官民370兆円超の投資構想は、日本経済を再生できるのか。政権の経済ブレーンで日本成長戦略会議構成員を務め、『何が日本経済を壊したのか』(ダイヤモンド社)の著者である会田卓司氏は、日本の長期停滞の原因は少子高齢化ではなく国内の投資不足にあると主張する。特集『高市政権1年 サナエノミクスの功罪』の本稿は、会田氏へのインタビューの前編。高市政権の「責任ある積極財政」や成長戦略の狙いについて見解を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

経済停滞の原因は人口減少ではなく投資不足
高市成長戦略の「コペルニクス的転回」

――ここまでの高市政権の経済政策をどう評価しますか。

 7月に日本成長戦略と骨太の方針をまとめました。骨太の方針の言葉を借りれば、経済政策の方針のコペルニクス的転回をしたことになります。当然、経済の認識もコペルニクス的転回をします。では、どのような認識の変化、転換が起こったのか。

 これまで日本経済の停滞の原因は、人口動態の悪化や人口減少といった、少子高齢化の宿命的なものであるという考え方が一般的でした。

 しかし高市政権は、経済停滞の原因は少子高齢化や人口減少という宿命的なものではなく、「国内の投資不足という意志の問題だ」という認識へとコペルニクス的転回をしました。この意志と計画を示したのが日本成長戦略で、それが織り込まれたのが骨太の方針です。

 年末までには日本成長戦略の実行計画が作成され、骨太の方針に沿って2027年度の政府予算がまとめられます。27年度の予算をしっかり執行していくことで高市政権の経済政策、投資拡大の政策、官民連携の戦略投資と産業政策が大きく動き出し、日本経済再生の動きにつながるわけです。

 ただ問題は、時間がかかることです。そのためにサナエノミクスに対する認識が浸透していない、理解が深まっていないという状態なのかもしれません。

――今回の成長戦略のポイントは。

 17の戦略分野、62の主要な製品・技術、ここに官民連携の戦略投資と産業政策を集中させていきます。このパッケージをポートフォリオと呼んでいます。

 戦略分野や主要な製品・技術の数について、「多過ぎる、総花的だ」とよく批判されますよ。しかし、例えば資産運用の世界で、投資ポートフォリオを総花的だと言う人はいません。日本が優位性、独自性を発揮できるのかどうかという勝ち筋を見定めているのです。

 当然、ロードマップの計画通りに投資が進捗しないこともあり得ます。うまくいかない分野については、日本成長戦略会議が見直していきます。

 これまでは、弱くて立ち行かない産業を何とか持ち直させようという産業政策が主流でした。弱い産業を強くすることは非常に難しいため、多くの産業政策が失敗をしてきたといわれています。

 しかし今回は、日本が世界に対して優位性や独自性を発揮できる分野に絞って投資していきます。強い産業をより強く、という考え方がこれまでとの大きな違いです。従来と比べて、投資の命中精度は高まるはずです。

 また、日本でようやく「デュアルユース」という言葉を戦略に使えるようになりました。これは民間と防衛の両方で使える技術を指します。当然、防衛需要をしっかりその投資対象の技術につけながら、投資を拡大していこうという考え方が根底にあります。

 投資先の初期需要として防衛需要をつけることで、投資がより多くの収益に結び付き成長が実現する。その技術が民間に応用されれば、そこで日本の優位性や独自性が発揮できるようになるのです。こういう考え方も取り入れていますから、17の戦略分野の一つに防衛産業も入っています。

 高市政権の成長戦略は、17の戦略分野と62の製品・技術に投資を集中し、強い産業をさらに強くすると会田氏は語る。次ページでは、370兆円超の投資財源や規制改革、日本の財政赤字について見解を聞いた。