Photo by Kuninobu Akutsu
高市早苗首相は安倍晋三元首相の「後継」を自任し、経済政策だけでなく政権運営についても安倍路線を踏襲しようとしているように見える。アベノミクスが軸にした異次元緩和を「積極財政」に置き換え、成長重視で経済の好循環を目指す一方、与党や中央省庁を人事などで抑えながら官邸主導の政治を志向している。だが果たして首相が掲げる「強い日本」「強い経済」は実現するのか。特集『高市政権1年 サナエノミクスの功罪』の本稿では、安倍路線を批判的に見ていた村上誠一郎・元総務相に、安倍政権との違いを含めて高市流の評価を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
やるべきはアベノミクスと逆方向の政策
財政規律回復と金利正常化のサポート
――高市政権のこの一年の政策や党運営をどう評価しますか。経済政策では「強い経済」の実現や「責任ある積極財政」を掲げています。
日本の政府債務残高の対GDP(国内総生産)比は200%を超え、主要国で突出しています。長期金利が上昇して3%を超えて30年ぶりの高水準となり、為替相場も財政などの状況を不安視して円安が止まらない状況です。
金融政策も、日本銀行が大量の国債を買い、さらには株式まで買ったアベノミクス時代の異常な状況からまだ脱却できていません。その上に、積極財政、消費税減税で火に油を注ぐようなことをやろうとしています。
「危機管理・成長投資」にしても、2040年度までに官民で370兆円の投資をすると言いますが、今の財政状況ではかなりの部分を民間に担ってもらう必要があります。ですが、政府が政策的な観点から重要な投資だと考えても、民間の観点での投資の合理性と一致するとは限りません。民間がついてこないと、結局は政府が被ることになるリスクを認識しているのでしょうか。
今の財政状況を放置したまま積極財政を展開すれば、円の信用はますますなくなります。さらに一番の問題は、長期金利がさらに上がることです。27年度予算の概算要求では、国債利払い費の金利を3.8%で計算していますが、今後、国債の借り換えが進むと、利払い費が雪だるま式に増え、さらに国債を増やさざるを得ないという負のスパイラルに入りかけているのが現状です。
物価高対策で国民生活を守ると主張していますが、今の物価上昇の大きな要因は円安です。しかし円安は、異次元緩和と称して超低利を長く続けるとともに、国債を大量に発行してきたアベノミクスの“負の遺産”です。
今になって慌てて「リフレ政策」ではないというメッセージを出していますが、負の遺産の解消の道のりはまだまだ遠い。今の日本経済はインフレで需給ギャップも回復してきています。デフレで物価を押し上げることが課題だった時代と、物価上昇から国民生活を守ることが課題の今とでは、政策の重点は当然、変えるべきです。やるべきは財政規律を回復させ日銀の金利正常化をサポートする、いわばアベノミクスと反対方向の政策です。
高市政権がやるべきはアベノミクスを踏襲するような積極財政ではなく、その反対方向の政策だと主張する村上氏。次ページでは、消費税減税などの政策の意思決定や、人事など高市流の政権運営についての見方を聞いた。







