アンソロピックとオープンAIの決定的な違い

 アンソロピックの業績は急拡大してきた。今年1~6月期の売上高は、162億8600万ドル(約2兆5569億円)と前年同期の約14倍に増えた。同期の営業キャッシュフローは39億2900万ドル(約6169億円)のプラス。財務キャッシュフローと合わせた、全体のフリーキャッシュフロー(FCF)も黒字に転換した(監査前時点)。

 アンソロピックは、AIモデルの利用量(トークン)に応じた従量課金を取っている。主な顧客は法人だ。売上高で見ると、昨年の47%、本年上期の48%は特定の企業(大手クラウド企業)に依存している。収益源の多角化が、今後の重要な課題といえるだろう。

 一方、ライバルのオープンAIは、2030年までの5年間で計2780億ドル(約43兆6460億円)のFCF赤字が発生する可能性があると報じられた。オープンAIは、ChatGPTの個人会員を柱に成長してきたが、同社の幹部が明らかにした内容(今年2月下旬)によると、週9億人の利用者の9割超は無料会員だった。

 アンソロピックの目論見書が公開された直後、同社の先行きに強気の見方をする投資家は増えている。同社の設備投資などの負担が増えたとしても、急速な成長が財務の安定と改善を担保すると考えているようだ。

 同社のIPOの目的は、資本の充実と財務の柔軟性を高めることだ。調達した資金はAI開発、データセンターやAI半導体の利用料支払いなどに充てる計画。目論見書に記載された、解約不可の支払い契約や半導体の追加調達額を含むと、2045年までに総額8000億ドル(約130兆円)もの資金が必要になる可能性がある。

 現在、アンソロピックは、その資金を投資ファンドなどから借りている。借り入れの利回りは10%を上回っているようだ。IPOによる自己資本の拡充は、信用力アップに寄与し借り入れコストの低減につながるはずだ。

 アンソロピックは、目論見書の約3割をリスク要因の説明に使った。AIが命令に背くことや、サイバー攻撃の危険性などを列記した。同社のリスクに対する意識は高いといえる。IPOによる資金調達と併せて、自社の明確な価値観に沿ったAIの安全基準を、世界標準にしたいのだろう。