日本全体でみると、1998〜2012年はモノやサービスの物価はじわじわと下がっていて、深刻なデフレ(物価の継続的な下落)が話題になってきました。しかし、教育に関係する物価は例外で、消費者物価指数の教育関連データをみると、大学の授業料、教科書、学生服などの物価は値上がり傾向が続いてきました。

 学習塾や予備校の授業料も上昇してきました。大人の習い事もふくめて、各種の教育や習い事の物価は基本的に上昇傾向にあったのです。教育・習い事の分野では、ミクロとマクロのデータの乖離があったといえます。

 ところが、消費者物価指数の統計を細かくみると、例外がひとつありました。「自動車教習料」です。代表的な習い事の物価と対比させながらグラフにしたものが図表2です。料理、水泳、英会話の3つの習い事の月謝は、日本経済がデフレに突入した1998年以降も、しっかりと上昇したことがわかります。他方、運転免許を取得するために通う自動車学校(教習所)の自動車教習料は、世のなかのデフレにあわせてゆるやかに下がってきました。

 ときどき「若者のクルマ離れ」が進んでいるという指摘があります。本当にそうなのでしょうか。2013年7月時点で、ウィキペディアには「若者の車離れ」という項目がありました。データで確認したいところですが、さまざまな年齢構成の家族がクルマを保有するなかで、若者がクルマに乗っているケースも、まったく乗らないケースもありますから、若者が現実にどれだけクルマに乗っているか、また所有しているのかのデータを得ることは困難です。

 ただし、クルマの運転免許の取得については、データを細かく調べることができます。運転免許を取らなければクルマには乗れませんから、「若者の免許離れ」を確認できれば、クルマの“所有”は別としても「若者のクルマ離れ」が起きていると指摘できます。

 この考え方に基づいて、「若者の免許離れとクルマ離れ」が事実であるという前提で解説がなされていた、典型的な記事のひとつが、NEWSポストセブンというニュースサイトに掲載されたものです。いろいろとそれらしい理由を挙げ、つぎのデータで示される「若者の免許離れ」の説明をしていました(記事のごく一部だけを引用しています)。

「指定自動車教習所の卒業者数は約156万人(2011年)で、2002年と比べると約40万人も減っている。それに伴い、教習所はこの10年で100校以上が廃業に追い込まれた」(NEWSポストセブン、2013年2月17日掲載)