
生成AIの黎明期は米国の巨大IT企業の独壇場だった。しかし、最近は生成AIのコア部分となる大規模言語モデル(LLM)を開発する日系企業が増えてきた。和製LLMの展開は、海外の競合企業の後塵を拝してきた日系エレクトロニクス企業による復権を懸けた挑戦でもある。特集『絶頂か崩壊か 半導体AIバブル』の#4では、自前のLLMを開発して製造業向けにAIサービスを展開するNECと富士通による“逆襲”の一手を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
冬の時代にあった日系エレキが“反転攻勢”
既にデジタルサービスが業績をけん引
和製の生成AIモデル(大規模言語モデル=LLM)も役者がそろってきた。NEC、富士通が独自のLLMを導入して、AIサービスを展開しているのだ。
多くの日系エレクトロ二クス企業は長い冬の時代を過ごしてきた。ITバブル崩壊、中国、韓国、台湾メーカーの台頭、リーマンショック、デジタルシフトの遅れ……。
エレクトロニクス産業が自動車と並ぶ外貨の稼ぎ頭だったのは遠い過去の話だ。同産業の生産額はピークだった2000年は26兆円に上ったが、先に挙げた複合的な要因で23年は10兆円にまで落ち込んでいる。
日本を代表するエレクトロニクス企業であるNECと富士通が歩んだ道のりも業界全体と一致する。NECの売上高は2000年度に5兆4100億で過去最高で、17年度には2兆8400億円まで減らした。富士通の売上高は2000年度に5兆4800億円だったが、17年度に4兆1000億円に減らした。
NECと富士通は共通点が多い。かつてパソコンと半導体事業を主力として圧倒的な競争力を誇りながら、事業環境の変化に適応できずに撤退した。「ガラケー」からスマートフォンへの移行も遅れ、携帯電話市場からも姿を消した。
一転して足元の業績は好調だ。富士通の主力セグメントであるサービスソリューションの売上高は20年度の1兆7000億円から23年度には2兆1000億円に伸長。NECのITサービスの売上高も21年度の1兆6000億円から23年度には1兆9000億円に膨らんでいる。
時流に乗ったプレーヤーがしのぎを削る、産業の「表舞台」に久々に返り咲いたともいえる。そして、苦闘の歴史にいよいよ終止符を打つ契機と期待されているのが独自LLMを使った生成AIサービスなのだ。
「もともと自社が製造業であることは、最初からIT企業として生まれた企業よりも(製造業におけるAIの活用を提案する上で)アドバンテージになる」。富士通の関係者はそう口にして自信を見せる。NECも長年製造業向けに製品ライフサイクル管理(PLM)基盤を提供してきたため、メーカー向けにAIの活用を提案するのに必要なノウハウがある。
次ページでは、主要な6社の和製LLMの「想定用途」や「ユーザー企業」などを一覧で示すとともに、NECと富士通が実現する「かゆいところに手が届く」AIサービスの内容を詳らかにする。