12月にインドネシアの金融市場に関するシンポジウム(国際協力機構主催)に参加するためジャカルタを訪問した。ジャカルタには親日感情が意外にあり、五輪真弓の「心の友」は誰もが知っている曲だという。「カイゼン」という名の10分間散髪屋もあった。

 ジャカルタはいまや高層ビルが林立する人口910万人超の大都市である。購買力を持ち始めた新中間層が急増しており、世界金融危機下でも消費は着実に伸びてきた。同国の年間所得1万ドルの世帯数は2020年にインドに並ぶという観測もある(『脱ガラパゴス戦略』北川史和、梅津政信著)。

 街を走るバイクや自動車の大半は日本メーカー製だ。しかし、中間所得層でにぎわう大型ショッピングモールを見渡してみると、家電、携帯電話、身の回り品、加工食品などにおける日本製品の競争力は残念ながら強くない。

 たとえば、テレビ売り場で主流を占めていたのは、正面からは薄型テレビに見えるものの、横から見ると、じつは奥行きが長いブラウン管テレビという「なんちゃって薄型テレビ」だった。

 LGなど韓国勢が中心である。価格は29インチで2万円台と非常に安い。ミニコンポや白物家電になると、聞いたことがないアジアのメーカーの廉価製品がさらに多くなる。